●安徽省合肥市にある鉄工所で。中国は現在、欧州連合(EU)の鉄鋼生産量の倍の余剰生産能力を抱える=ロイター
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日本経済新聞 2013/10/10 7:00 フォーブス
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK08031_Y3A001C1000000/
中国企業、行き詰まる債務返済 破綻の連鎖も
(2013年9月22日 Forbes.com)
2012年末時点の中国企業の債務は、一般に参考にされているロイヤルバンク・オブ・スコットランドのルイス・クイジス氏のデータによると、国内総生産(GDP)の「113%」だった。
2008年の「86%」から悪化している。
JPモルガンは2012年の数値を「124%」、
スペイン系BBVAは約「130%」と見積もっている。
だが実態と比較すると、どの数字も低すぎる。
GDPの数値として過大評価も甚だしい公式統計をもとにしているからだ。
名目GDPに物価上昇を適切に反映するだけで、2012年のGDPは1兆ドル(約97兆円)以上減少する。
そこからさらに明らかな偽りを削れば、
中国企業の債務はGDPの「155%」
といった驚くべき数値になるだろう。
中国の企業債務は、全国的な危機の引き金となるだろうか?
UBSのワン・タオ氏は今年7月、
「債務水準は国が深刻な問題を抱えているか否かの判断基準として適切ではない。
問題は返済が可能か否かで、今のところ中国には債務の返済能力がある」
と語っている。
たしかに今のところ、ワン氏の見方は正しい。
だが簡単な計算をするだけで、中国はまもなく大量のデフォルト(債務不履行)に悩まされることが予想できる。
サウスチャイナ・モーニングポスト紙のトム・ホーランド氏は
「中国株式会社のバランスシートは危険信号を発している」
と書いている。
具体的にホーランド氏が挙げているのは、中国の売り上げ規模の大きい上場企業1500社の債務は、年間営業キャッシュフローの7倍近いという調査会社フォレンジック・アジアのギレム・トゥロック氏の指摘だ。
健全な水準は3~4倍、6倍で危険という。
そのうえ中国企業の財務状況は急激に悪化している。
2012年の企業部門の純債務は純利益の30倍と、2011年の10倍から大幅に増えている。
■過剰生産能力を抱える鉄鋼業界
利益が減少し、債務が増加するなか、中国企業の債務返済能力は急激に悪化するだろう。
すでにフリーキャッシュフローは大幅なマイナスだ。
これはアジアでは1997年の金融危機直前の数カ月以外には例のない、きわめてまれな事態だ。
「ゴースト・シティ問題」に注目しているアナリストは、中国の債務危機はLGFVと呼ばれる悪名高い地方政府系の金融機関から始まると考えている。
だが足もとでは、巨大な国営企業や小規模な民間企業など、国内企業が危機の引き金になるという懸念が高まっている。
最も深刻な問題を抱えているのは、おそらく鉄鋼業界だろう。
同業界の生産能力は世界の鉄鋼生産の66%を占めるまでになったが、そのための工場を建設するのに総額4900億ドルの債務を積み上げた。
だが中国政府は明らかにやりすぎた。
中国は現在、3億トンの余剰生産能力を抱えているが、これは欧州連合(EU)の生産量の2倍に相当する。
過剰生産能力は必然的にデフォルトにつながったが、これまでのところは業界周辺部にとどまっている。
江蘇省などの鉄鋼商社は債務返済に行き詰まり、今年4月にはシティック・トラストが元利返済の滞った鉄鋼関連のトラスト(企業合同)の債務を競売にかけた。
一見したところ、大手鉄鋼会社の破綻は起こりそうもないが、それは中国政府が長年鉄鋼産業を支援してきたことが大きい。
改革派の李克強首相は重要性の低い工場を閉鎖したいと考えているが、中国ウオッチャーの間では小さな工場を1つか2つ閉鎖する程度に終わるという見方が大勢を占める。
李首相の前任者たちも余剰生産能力の解消に努めたが、結局地元の抵抗に遭い、ものの見事に失敗した。
こうした状況を踏まえて、公的機関である中国冶金規画研究院の李新創院長でさえ、資金の借り換え難から、1年以内に少なくとも1件はデフォルトが起こると見ている。
■「1年以内に企業のデフォルトが増加」
大手企業の破綻は、鉄鋼業界でドミノ効果を引き起こすという見方もある。
ありえないような話だが、今年3月に太陽光パネル世界最大手であるサンテック・パワーの中核子会社が破産法の適用を申請したことは、今後鉄鋼業界で起こる事態の予兆のようだ。
サンテックの太陽光パネルも鉄鋼業と同じように中央政府の手厚い支援を受け、それが過剰生産能力を生むことになったため、サンテック子会社の破産申請は明らかな警告といえる。
鉄鋼や太陽光パネル業界と同じような問題は、重工業全般に顕著だ。例えば石炭やアルミ会社は現在、特に脆弱に見える。
このためアナリストは懸念を強めている。
S&P香港支社のクリストファー・リー氏は今後半年~1年以内に企業のデフォルトが増加すると予想する。
JPモルガンのチュウ・ハイビン氏は企業債務を「最大の懸念材料」と指摘する。
フォレンジック・アジアのトゥロック氏は
「不況は避けられない。
中国がシステムを浄化するには景気後退が必要だ」
と語る。
中国のテクノクラートはこれまで、システム浄化のための景気後退を避けることに成功してきた。
国家統計局によると、最後にそれが起きたのは毛沢東が死んだ1976年だという。
ただ現実には、中国は1990年代末にも不況に陥っており、今回もまだ不況が始まっていないとすれば、まさにその瀬戸際にある。
■流動性供給を続ける人民銀
現在、李首相は景気後退を避けるため、中央銀行である中国人民銀行にあふれんばかりの資金供給を命じている。
人民銀行は6月21日にひそかに流動性供給を開始し、その後も一部は公然と、また一部は秘密裏に供給を継続している。
公式統計が正確であれば、流動性供給は不必要に思える。
だが中国政府の自慢である大規模企業は金欠状態で、今は支払いに銀行引受手形(実質的には約束手形)のような現金代替物を使っている。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、上海のある自動車部品会社では、売掛金のほぼ3分の2をこうした現金代替物で受け取っている。
このため仕入れ先に支払いをするための現金がない。
同紙は吉林省の自動車会社が発行し、支払いに2度使用された額面約100万元(約1580万円)の手形を確認している。
こうした行為は横行している。
発行済み手形の総額は2008年にはGDPの3%だったが、昨年には同11%に増加した。
実効金利が急上昇している現状(2年前はゼロ%だったが、最近は企業の支払う平均金利は「8%近い」)では、
支払いの連鎖のうちたった1社がデフォルトするだけで、省や産業の枠を超えた破綻の連鎖が始まりかねない。
By Gordon G. Chang, Contributor
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日本経済新聞 2013/10/12 7:10
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO48913460Y2A121C1000018/
中国、成長の陰にゴーストタウン
「神々がシーシュポスに科した刑罰は休みなく岩を転がして、山の頂上まで運び上げることだった。
だが、山頂に達すると岩はいつも転がり落ちてしまうのだった」。
フランスの作家、アルベール・カミュは代表作のひとつ『シーシュポスの神話』のなかで、無益な労働の繰り返しほど空虚で残酷なものはないことを描いた。
だが、それは人間の営みそのものを象徴しており、人は死ねば築き上げたものがすべて消え去るという真理を指している、といわれる。
■巨大開発区にまばらな人影
中国各地に「鬼城(グイチャン)」と呼ばれる巨大ゴーストタウンが出現している。
山を削り、谷を埋め、工場用地を造成し、林立するオフィスビルに高層マンション群、広大な港湾、空港、高速道路、国際展示場、博物館、サッカースタジアム、緑もまぶしい公園や人工池--。
数十から数百ヘクタールの土地に数兆円の資金を投じて、つくり上げられた目を見張る開発区だが、広大な工場用地には建物はなく、ビル群やマンションには人影もまばら。
夜になっても灯りが点る窓はごくわずかだ。
13億7000万人の人口を抱える中国で、これほど人の気配のない場所があるのかと驚かされる。
●中国各地でゴーストタウンとなるプロジェクトが続出している
河北省唐山市曹妃甸(そうひでん)もそんなゴーストタウンのひとつだ。
9兆円を超える費用を投じてつくられたが、北京から移転を迫られた製鉄所が存在感を放つだけで、工場は数えるほど。
オフィス街で唯一人の出入りがあるのは、北京の中央官庁にも匹敵するような巨大ビルを持つ曹妃甸開発委員会。
工場進出予定とされる空地を走る道路の両側には10メートルおきに太陽光発電パネルと小型風力発電機が取り付けられた街路灯が延々と続く。
その距離は10キロにも達しようかという規模だ。
このようなゴーストタウンが中国全土には大きなものだけで20~30はあるとされる。
広東省の新聞は河南省鄭州、遼寧省営口、内モンゴル自治区のオルドスなど「12大鬼城」を紹介している。
中国経済の高成長を支えたインフラ投資の大きな部分を占めたのは、こうした鬼城だった。
■“中国版シーシュポスの神話”
こうした鬼城は使われないまま朽ち果て、やがて取り壊され、再び新規のビルや道路が建設される。それもあまり長い時を経ず、朽ち果てるのかもしれない。
中国経済にとって、広大な開発区、オフィス街、マンション群が活用されるかどうかはあまり意味を持たず、鉄鋼、セメント、ガラス、樹脂など膨大な素材を使い、建機と労働力を投入することにこそ意味があり、その繰り返しが成長の原動力となった。
“中国版シーシュポスの神話”である。
体制存続のために中国共産党に課せられた役務だった。
こうした“中国版シーシュポスの神話”を成り立たせたのはシャドーバンキングと理財商品である。
各地方政府は投資回収も期待できない無謀な投資の資金を一般の予算や通常の金融システムを通じた借り入れでは手当てできない。
一般的ではない資金調達手段がシャドーバンキングからの高利の借り入れであり、借り入れ主体となったのは地方政府がインフラ建設、運営を目的につくった企業だった。
政府傘下だが、政府そのものではない企業が莫大な資金を調達した。
シャドーバンキングの資金源となったのは理財商品と呼ばれる高利をうたった金融商品だ。
北京や上海など大都市はもちろん地方都市でも銀行の窓口や街中の投資会社で購入できる。
30日、45日といった短期が中心で、長いものでも182日といった投資だ。
購入する側も年利25%、30%といった高利のリスクを知りつつ、短期償還ゆえに買うという金融商品。
「誰かが最後にはババを引くが、それは自分ではない」
と誰もが考え、購入している。
だが、開発区をつくった地方政府の関連企業がシャドーバンクへの返済ができなくなれば、理財商品の償還も不能になる。
理財商品の償還不能はすでに江蘇省連雲港などで出ており、焦げ付いた理財商品を買っていた市民が市庁舎に押しかける騒ぎも起きている。
これが広がれば、理財商品とシャドーバンクによる資金供給手段は消え、中国の活況を生んでいたバブルは崩壊に向かうだろう。
■シャドーバンキングが生む“幽霊需要”
“中国版シーシュポスの神話”が創り出していたインフラ分野の工業製品需要も蒸発する。
ここに到れば、世界は中国政府がつくり出していたのは有効需要ではなく、“幽霊需要”にすぎなかったことに気づかされるだろう。
このインパクトは2008年9月のリーマンショックを上回る恐れがある。
ゴーストタウンが生まれる過程では巨額の賄賂が飛び交い、その多くは海外預金に流出しているといわれる。
中国経済の不条理は底知れない。
【未来世紀ジパング】
「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「緊迫中国第二弾!潜入“12大ゴーストタウン”…人類史上最大のバブルの行方」は10月14日放送の予定です。
by 編集委員 後藤康浩
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ウォールストリートジャーナル 2013年 10月 19日 13:58 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304134704579144572494907660.html?mod=WSJJP_hpp_LEFTTopStoriesSecond
By AARON BACK
中国、再び景気加速も先行きは不透明
●中国経済の行方を占う材料として多くのアナリストが注目する「社会融資総量」は今年1-3月期、大幅に増えた。右は李克強首相
中国経済は回復したが、経済成長の路線をめぐる議論は依然として決着していない。
世界2位の経済大国である中国の7-9月期国内総生産(GDP)は前年同期比7.8%増と、4-6月期の同7.5%増から伸びが加速した。
ただ、政府支出と信用の大幅拡大に支えられた結果だけに、十分に健全とは言えないだろう。
李克強首相は3月の就任当時、経済の持続可能な発展を目指すうえで成長鈍化もやむを得ないと主張し、国家主導の投資に依存する成長からの脱却を示唆した。
しかし、7月上旬には、そのような政策に伴う痛みもとうとう限界に達したようだ。
どの程度までの成長鈍化を容認するかについては具体的な数字が示されていないものの、李氏は成長率が最低水準を下回ることは認めないと約束した。
政府は同月、鉄道などのインフラ支出の増加を開始した。
そして、その効果は7-9月期に表れ始め、鉄道や道路への投資は前年同期比22%となった。
さらに、このような「ミニ刺激策」が開始される前から、政府当局は既に信用拡大を容認している。
銀行融資以外の貸し出しも含めた広義の信用指標として、中国政府が発表する社会融資総量を見た場合、年初から5カ月間の数字は前年同期比52%増と、驚くべき伸びとなった。
信用拡大はその後に2カ月に鈍化したが、8月と9月には再び進行している。
多くのアナリストは現在、中国経済の行方を占う材料として他の指標より社会融資総量を注視している。
ただ、社会融資総量がこのように変動していることで、中国経済の行方が不透明なことが示された形だ。
来月には、5年に一度開かれる共産党の中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開催され、その際にはこの不透明感が払しょくされる可能性がある。
過去を振り返ると、1978年と1993年に行われた会議では経済開放政策が打ち出されている。
ただ、2003年の会議は当時の胡錦濤主席の指導下、国家統制主義的な議題が中心となった。
今年の三中全会については、より効率的で市場に基づいた資本配分を促す改革の決定が期待されるところだ。
改革によって信用拡大による刺激策への依存を断ち切ることができよう。
金利の自由化や国営企業の特権の削減など、改革派の要求は数多くある。
その一方で、政策の不透明感は経済の足かせになっている。
IBMのマーク・ローリッジ最高財務責任者(CFO)は同社の第3四半期業績が予想を下回った原因として、この点を指摘した。
同社の中国売上高は前年同期比で22%減少した。
IBMは中国が新経済計画の策定過程で足踏みしているとみている。
実際、このような不透明感は三中全会後も続く可能性もある。
中国は来月、改革の取り組み姿勢を強く示すかもしれないが、その実行は途切れがちになったり、段階的になったりする可能性が高い。
景気刺激策の要求に李氏が屈したことを考えると、同氏の改革路線は限定的になると思われる。
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発信時間: 2013-10-22 18:55:39 | チャイナネット |
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2013-10/22/content_30371795.htm
米華字紙:奇跡を生む中国経済の力を見くびるな
米華字紙「僑報」(電子版)は17日、「新たな奇跡を生み出す中国経済の力を見くびるな」という文で、西側は中国の経済発展の見通しに懐疑的、否定的態度だが、その少数は政治的偏見に基づいており、あとの大部分は中国の国情に対する理解が欠如しているためと指摘した。
内容は次の通り。
①. まず、労働集約型企業、特に加工輸出企業が集まる中国の沿海、とりわけ広東などの地域では賃金水準が上昇し、労働コストが上がった。
そのため中国は安い労働力という強みを失い、最適な投資先ではなくなり、発展の勢いが鈍るという声がある。
こうした見方には2つの偏りがある。
一つは、中国の領土は広大で、発達した地域は沿海や少数の大都市だけで、広大な内陸部、特に中西部の地域ではまだ億単位の安い労働力の開発利用が可能だということ。
もう一つは、沿海の発達した地域も発展するところまで発展したわけではなく、現在は品種革新、バージョンアップ、自主革新の方向への発展に向け、質の向上で効果を上げる努力をしている。
②.第二に、中国の知識と知能の向上スピードに対する見積もり不足があげられる。
中国では毎年600~700万人の大学生が卒業し、大きな雇用圧力にさらされている。
しかし雇用問題を解決できれば、これは中国にとって大きな強みとなる。
また、中国の台頭にともない、海外留学組が卒業後に帰国する割合が年々増加している。
この5年で中国に帰国した留学経験者は80万人近くに上る。
2012年の中国の失業率は米国を大きく下回った。
膨大な知識人の数、科学技術レベルの向上が中国の自主革新力の源泉となる。
③.第三は、中国の都市化の原動力、起業のニーズとビジネスチャンスに対する見積もり不足があげられる。
中国の都市化は、数億人の農民の豊かな生活への思いを原動力としている。
数億人の農民が途切れることなく都市へ押し寄せ、都市の重い負担となっているが、彼らは若い労働力であり、近代化の新鋭部隊でもある。
彼らが創造した富とその貢献は彼らの消費と都市の負担を大きく上回る。
中国の都市人口はようやく全人口の過半数になった。
都市化の歩みはあと数十年は続くだろう。
そして多くの内需を生み、より多くの発展の原動力とチャンスをもたらすだろう。
一部の人が騒いでいる「中国債務危機」は重視すべきだが、それを誇張する必要はない。
中国はお金に困っていない。
国家の財政赤字は安全だ。
外貨準備高は世界一で、一部で貸借問題が生じているが、全体では民間も貸借危機は存在していない。
一部の地方政府の債務問題を「中国債務危機」と騒ぎ立て、「次のデトロイトは中国」とまで高言する声があるが、それは事実にそぐわない。
中国の少数の地方政府の債務負担は西側政府の債務危機とは性質的な違いがある。
西側の債務危機は主に福利、国防、行政などの過剰支出による消費型の債務で回収不可能だが、中国の地方政府の債務負担は貸付・投資で行った建設件数が多過ぎたことが原因で、適切にコントロールすれば利益を生む可能性がまだある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年10月22日
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International Business Times 2013年10月28日 12時22分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/50717/20131028/631999.htm
記者:Moran Zhang、翻訳者:臼村さおり |
中国のインフラ投資の裏事情―負債総額は不明
中国西南部の四川省はインフラ投資に積極的だ。
2009年以来、同省は道路など交通整備に5兆6,000億元(約90兆円)以上を投入してきた。
四川省は先週、3つの高速道路、5つの鉄道、西中国最大の空港建設に、向こう2年間で4兆3,000億元を投資する計画を発表した。
投資規模は昨年の同省のGDPの約2倍、歳入の約10倍である。
四川省は、中国では自由に負債を抱えることが認められている唯一の地域(自治体)だ。
2008年の世界金融危機の後、中国製品への外需は大きく落ち込み、輸出は、中国経済の原動力ではなくなった。
2008年から2012年の間に、中国の国内総生産(GDP)における純輸出の寄与度は8%ポイントからマイナス2%ポイントに低下した。
一方、中国への投資は43%から約50%に上昇している。
そして昨年、中国の中央政府は、13年間で最も鈍い経済成長率を受けて、インフラ整備で経済を刺激する政策を打ち出した。
しかし、1994年以降、中国の地方政府は独自に資金を借りることができなくなっていた。
法の網をかいくぐるため、地方政府は不動産開発のために作られた特別目的会社(local-government financing vehicles、略称:LGFVs)を利用している。
LGFVsを経由すれば、銀行融資や債券を通じて資金を集めることができる。
野村のチーフエコノミストであるツァイウェイ・ツァン(Zhiwei Zhang)氏は、
「2009年以降の中国のインフラ投資のほとんどはこの方法です」
と説明する。
影の銀行を利用した場合、調達コストはより高く、返済期間はより短くなる。
時には年利10%以上のこともある。
中国の自治体の負債総額は、中央政府でさえ把握していない。
エコノミストは15兆元から30兆元に及んでいると予測する。
それは、中国のGDPの約30%から60%に相当する。
積もる負債を懸念した中国の中央政府は、昨年7月、負債総額の最終的なレポートを至急作り出すように監査局に依頼した。
中国の専門家は、おそらく11月の共産党中央委員会の本会議の前、今後数週間のうちにも同レポートが発表されるであろうと予測している。
ニューヨークにあるジェローム・リーヴィ・フォーキャスト・センタ(the Jerome Levy Forecasting Center)の上級エコノミストであるロバート・キング(Robert King)氏は
「中央政府は、正確な数字を知りたがっています。
正確な数字を報告したがっているかどうかは定かではありませんが…」
と述べた。
キング氏は
「北京が直面しているジレンマは、短期的な成長のためにはインフラ投資が必要ですが、長期的には負債が大きな問題になりかねないことです」
と述べた。
そして、インフラ整備の費用負担が、地方政府にのしかかっている。
LGFVsの信用格付が最近格下げされたという問題もある。
野村によると、過去にはこのようなことはあまりなかったが、今年は今までに7回ある。
格下げされれば、資金調達コストが高くなり、負債を維持することが難しくなる。
野村は、地方政府のサポートがなければ、LGFVsの半分以上が2012年にデフォルトしていた可能性があると見積もっている。
しかし、中国は経済危機に陥らないであろうとういう見方が優勢である。
中央政府が地方政府の債務を返済するだろうと考えられているのだ。
中国の債務は、対GDP比21%と非常に低い。
中国人民銀行にはGDPの6%相当の現金貯金がある。
また、中国の外貨準備高は3兆5,000億米ドルである。
9月11日、李克強首相は、地方政府の負債について
「人々が心配していることについては、集中して対策を講じる」
と述べた。
専門家によれば、財政面において、中央政府と地方政府の歳入と歳出のバランスが再構築される必要がある。
過去15年で、地方政府は歳入の90%を使用したが、中央政府はおよそ10%しか使用していない。
ちなみに、OECD諸国の平均は46%である。
中国の経済は、確かにでこぼこしている。
しかし、少なくとも、地方政府の経済が完全に破綻するのは避けられるであろう。
*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。
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