●18日、捜狐は記事「中国民間企業がJPモルガン本社ビルを買収」を掲載した。ワン・チェース・マンハッタン・プラザは60階建ての高層ビル。ニューヨークの名所、ランドマークとしても知られている。写真はワン・チェース・マンハッタン・プラザ。
WEDGE Infinity 2013年10月22日(Tue)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3277
米国の不動産買い漁る地下銀行マネー
その額年1兆円超
習近平体制の特徴を示すとされる“八項規定 六項禁令”――。
俗に倹約令とかぜい沢禁止令と呼ばれる政策の効果が社会の隅々にまで影響を及ぼしている。
■中国を“見切った”富裕層たち
その1つとしていま注目されているのが、
●.ビジネスで成功を収めた富裕層たちの海外逃避現象であり、
●.また有力官僚たちの失踪問題、
●.そして民間金融業者(地下銀行を営む者たち)が違法に収集した資金を持ち逃げする
という事件である。
業態はそれぞれ違っていても、
いずれにも共通しているのはある意味で中国を“見切った”という点だろう。
こうした現象に対しては、中国国内の資産が持ち出されることに神経質になる政府と、それと同時に、持ち出す資産も、海外に逃げ出す手段もない大多数の国民からも反発が強く、メディアがテーマとして扱う頻度も急激に増してきている。
そうしたなか、8月24日付で出された『中国新聞網』の記事が大きな話題を呼んだ。
■1兆円を超す不動産投資、うち7割が現金払い
タイトルは、〈昨年1年間、中国人がアメリカで買ったアメリカの不動産の総額は123億ドルに達する うち7割が現金で支払い〉という衝撃的なものだった。
記事の内容は、『中国評論通信社』と『チャイナプレスUSA』からの引用だが、数字そのものは全米リアルター協会(NAR)のものだ。
記事の目玉はタイトルにある通り。
中国人が年間1兆円を超える不動産をアメリカ国内で買い漁っているというものだ。
しかも、そのほとんどが高額物件だというのに、キャッシュでポンと買ってしまったというのだから、いまさらながらその購買力に驚かされる。
「中国人がアメリカで不動産を買う目的の1つには、現地の永住権を取得することですから、投じる金額は大きいに越したことはないのです。なかには買うだけでグリーンカードがついてくる高額物件もありますからね」(国務院OB)
事実、中国人が現地で購入した不動産は高額な物件が目立つ。
NARの集計によれば、中国人が買った物件の平均値(42万5000ドル)は、アメリカ国内で売買された物件の平均値の約2倍で、
すべての外国人が購入した物件の平均値(27万6000ドル)の1.5倍にもなるという。
■全米のほとんどの州で不動産投資額がベスト5に入る中国勢
現在、全米50州のうちなんと44州で中国人の不動産投資額がベスト5に入っていて、うちニューヨークとハワイで第2位、カリフォルニアで第3位となっているが、
なかでもカリフォルニアは人気が高く、過去1年間のうちに同地で売り出された不動産の約半分が中国人によって買われているといった集計結果もあるというのだ。
げに恐ろしきはチャイナ・マネーといったところだが、注目すべき点は金額の大きさばかりではない。
「やはり重要なのは異様な伸び幅だ」と語るのは、前出の国務院OBである。
「今回、NARが明らかにしたのは年間123億ドルですが、これは昨年3月から1年間の数字です。では、その1年前の2011年3月から2012年3月までの1年間はどうだったかといえば、約74億ドルだったのです。
つまり、たった1年の間に金額にして約50億ドル。
増え幅にして倍増どころか、66%という凄まじい数字がはじき出されてくるから驚きです」
では、こうした不動産投資熱が恐ろしい勢いで高まり続けていることの背景には、いったい何があるのだろうか?
この現象を直ちに習近平体制下で起きた変化と結びつけられるわけではないが、統計が習体制後の2012年11月からの4カ月間を含んだものであることも事実である。
そうした事情を考慮しつつ分析すれば、重要になるのは胡錦濤体制から習近平体制に引き継がれたところに原因がないかととらえるのが最も自然であろう。
●.その1つが、地下マネーの影響である。
地下経済に対する中央の攻撃によって、民間金融が一部崩壊しその資金が流れていっていることだ。
■資金流出の背景にある中央の統制と地方に対するコントロールの強化
背景にあるのは中央による資源・エネルギー政策の統制と地方に対するコントロールの強化である。
おもに鉱物資源などの非正規ルートによる流出は、価格をコントロールすることによって資源と産業を結びつけるという戦略的な政策を持っていた中央の足を大きく引っ張ることとなった。
地方に蔓延する非正規の炭坑や鉱山は、中央にとってかねてから頭の痛い問題であったが、こうしたヤミ鉱山やヤミ炭鉱は地方の利益とも密接につながっているため、これらをなくすことは現実的には簡単なことではない。
そこで中央が目を付けたのがヤミ鉱山やヤミ炭鉱を資金の点から支えている民間金融(要するに地下銀行)の存在であった。
地下銀行に対する当局の戦いは、胡錦濤体制になって以降いくつかの局面で先鋭化したことがあるが、その度に中央が“現実”という厚い壁に阻まれ後退を余儀なくされることを繰り返した。
というのも地下経済が支えているのは、一部の地方における資金需要だけでなく、
実に中国の中小企業の6割に当たる資金需要を担っているからだ。
そのため地下銀行に対する引き締めを行えば、たちまち経済そのものが悲鳴を上げるという現実に直面することになる。
そのため中央は硬軟対策の「軟」として地下の「表化」を推進してきた。
つまり、一定の基準を満たせば地下金融を銀行に昇格させるというものだ。
そしてその一方でどうしても「表化」に従わない地下銀行に対して強硬な手段に出るという「硬」を実施したのである。それが2011年のことである。
■地下マネーの動きが温州の地価にも影響
この余波で、温州市において企業経営者が大量に夜逃げするという現象が大きな社会問題になった。
ここから地下マネーが大量に海外に流れ出すという現象が本格化したとされ、温州の地価はこの影響を受けて下落を続けている。
一方、地下がざわめき始めると表が連動するのが中国の一つの流れである。
もはや「中所得国の罠」と呼ばれる現実に直面したことが間違いない中国経済は、今後ゆるやかな下降局面に入ることが否めない。
そして経済急成長という政権の正当性を担保する材料を失った中央が、富の分配に厳しい目を向けてくることは当然のこととして予測された。
その一つの現実こそ、冒頭で触れたぜい沢禁止令なのである。
「ハエもトラも叩く」と豪語する指導部の掛け声の下、これまで浮利にまみれてきた人々が戦々恐々となっているのだ。
そして当然のことながら、そうしたあぶく銭を安心な場所に移しておきたいという動機が鮮明になってきているのである。
富坂 聰(とみさか・さとし) ジャーナリスト
1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年10月20日 20時38分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=78094&type=0
ニューヨークのランドマーク、超高層ビルを700億円で中国企業が買収―米国
2013年10月18日、捜狐は記事「中国民間企業がJPモルガン本社ビルを買収」を掲載した。
米紙ウォールストリートジャーナルによると、中国の大手民間企業、復星国際が7億2500万ドル(約708億円)で米ニューヨーク市の超高層オフィスビル「ワン・チェース・マンハッタン・プラザ」を買収した。
ワン・チェース・マンハッタン・プラザは60階建ての超高層ビル。911で倒壊したワールドトレードセンターに近いマンハッタンのダウンタウンという一等地に位置している。かつてはJPモルガンの本社が置かれていた。今でも一部フロアはJPモルガンが利用している。
復星国際は「ワン・チェース・マンハッタン・プラザは歴史的な重要性があるばかりか、地理的な優越性も備えている。ワールドトレードセンターの再建、フルトン・ストリートの交通センター改修に伴い、今後資産価値は向上する」との声明を発表している。
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バブル期の日本が盛んに海外不動産物件を買いあさっていたことを思い出すのだが。
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