●16日、李克強首相の乗る特別機が上げる離陸の轟音とともに、中国新指導部発足後初の政府首脳による東南アジア訪問が幕を開けた。資料写真。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年10月18日 16時10分
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中国が東南アジアで切った4つの有効なカード―中国メディア
2013年10月16日、李克強(リー・カーチアン)首相の乗る特別機が上げる離陸の轟音とともに、中国新指導部発足後初の政府首脳による東南アジア訪問が幕を開けた。
国家主席と首相による相次ぐ東南アジア訪問を通じて、切るべきカードを持ち、カードの切り方にも精通しているという中国外交の新たなイメージを人々は感じ取った。
2週間近くの間に、中国は東南アジアで少なくとも4つの有効なカードを切った。
①.コネクティビティ、
②.経済の明るい展望、
③.海上協力、
④.「親戚同士の縁組」
だ。
(文:葉海林(イエ・ハイリン)中国社会科学院グローバル戦略院国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
中国が長年の力の蓄積を経て、近隣国を始め諸外国との関係を処理するにあたり支配できる資源が増え、投入できる力が大きくなっていることは、すでに争う余地のない事実だ。
だが国際関係の駆引きが単なる力の競争であったことはない。
①.駆引き相手を上回る力を持つだけでは、自国の戦略の順調な実施を確保するには不十分だ。
②.戦略が思い通りの成果を上げるには、強大な力だけでなく、それ以上に力を高い水準で使用する必要がある。
③.多くの状況では、力の使用方法を断固貫徹する決意も必要だ。
この3つのうち1つも欠けてはならない。
これも繰り返し検証されてきた事実だ。
中国国家指導者の今回の東南アジアシャトル訪問によって、中国の持つ外交資源が潤沢になってきたことがはっきりと示されただけでなく、東南アジアを始めとする全世界は中国が力の運用テクニックに熟達してきたことを感じ取り、既定の戦略を堅持するとの中国の決意が揺るぎなくなっていることを身をもって理解した。
訪問中、中国政府はASEAN全体および個々の訪問国を対象とする各レベル・分野の協力枠組みを打ち出した。
こうした枠組みはいずれも資金、技術、市場など力強い現実的基礎を必要とする。
長期的成長の確保に関する中国国家主席の約束は、自らの実力に対する中国の自信の表れだ。
そしてこの自信は、東南アジア諸国との協力枠組みを対象国の賛同と支持とを得ることによってできた心理的基礎となった。
テクニックは実力を基礎に築かれて初めて意義を持ち、効果を生むことができる。
中国の総理はタイでの高速鉄道技術の売り込みでも、ベトナムでの3つの協力枠組みの提唱でも、中国の投入できる力を前提にした。
だが中国は自らの力を盲信しているわけでは決してない。
ましてや、いわゆる金銭外交を推し進めてはいない。
タイでの高速鉄道技術の売り込みであれ、ベトナムとの通貨スワップの推進であれ、中国の打ち出した協力枠組みは、自らの力の運用熟達度の高まりを具体的に示すものだ。
現状に立って、虚利虚名を排し、近隣諸国に貢献するとともに自らにも恩恵を及ぼす方針を堅持する。
この運用原則は、
「金を払って安定を求める」論理パラドクスを避け、
対象国の懸念を引き起こすことがなく、
一歩一歩進めるなかで、
共通利益の最大化を図るものだ。
力は他国を脅すために用いるものではない。
これは太陽が北風より歓迎される原因だ。
もちろん、中国は自らの善意が全ての国から友好的なフィードバックを得られると盲信してもいない。
スカボロー礁事件以降、中国は一方的な善意によってフィリピンとの関係を緩和する従来のやり方を放棄した。
フィリピン指導者に対する中国指導者の加減ある冷淡な姿勢は、フィリピン政府が騒ぎ立てたからといって戦術を変える考えが中国にないことを物語っている。
原則を堅持する。
たとえそれによって、時としていくつかの近隣国が騒いだとしても少しも惜しくはない。
実際には、まさにこうした原則の堅持によって、中国の善意のもたらす良い結果を、近隣諸国はより容易に感じとるようになるのだ。
東南アジアで、中国はセットのカードを切った。
人々はバリ島で、カード全体を通して南シナ海の大局を描き出す中国の気迫を目にした。
タイで、中国指導者がタイとの友情を肉親の情のように大切にしていることを感じ取った。
ベトナムで、金融カードとインフラカードによって協力を拡大し共栄を促進する中国の誠意を身をもって感じ取った。
そして広大な南シナ海で、トンキン湾区域協力によって「係争棚上げ、共同開発」を実践する中国の知恵を理解した。
そしてこうした全てのカードが組み合わさって合力を形成できたのは、まさにそれらの間に内在的な論理関係が存在するためである。
つまり原則の堅持を基礎に自らの優勢な力を柔軟に運用し、力、テクニック、決意の均衡を達成し、中国との協力・ウィンウィンによる効果と対立継続による代償についての周辺国の見積もりを保証すると同時に効果を生んだのだ。
(提供/人民網日本語版・翻訳/ NA・編集/武藤)
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何を言っているのかはっきりは分からないが、
トーンではなんとなく自己弁護的な色合いが濃厚である。
これまで中国は大国然として周辺諸国を見下していた感があったが、今回のASEANではまるでそんな雰囲気が消えていた。
恫喝外交が消え、手みやげ外交に変わっていた。
アシアの状況が中国の一人勝ちを許さなくなったのであろう。
周辺国としては、いかに中国からゼニを引き出すか、それが今大会のテーマになっていた。
中国は西欧諸国から資金を呼ぶ込むことで成長できた。
次は周辺国で、、今度は中国からどのくらいのゼニをむしり取れるかが勝負になってきている。
いまのところこの勝負は周辺国に有利に推移している。
中国としてはむしり取られるであろうゼニにどんな理屈をつけるべきか腐心しているといったところだろうか。
今回は「中国の負け」といった勝負である。
この悔しさを記事にしたのが上のなんだか内容のつかめない文章ということだろう。
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JB Press The Economist 2013.10.25(金)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39013
東南アジアとの関係:米国不在で中国が存在感
(英エコノミスト誌 2013年10月19日号)
超大国が別件で取り込んでいる隙に、中国が東南アジアで好機をつかむ
APEC首脳会議開幕、米大統領欠席で注目集めるのは中国か
●10月初旬にバリ島で開かれたAPEC首脳会議でも、オバマ大統領の不在と習近平国家主席(左端)の存在感が際立つことになった〔AFPBB News〕
10月13日、中国の李克強首相が3日間の訪問予定でベトナムに到着した時、首都の道路沿いには何十万もの人が集まった。
だが、群集は李首相のためにそこにいたわけではなかった。
その日は、ベトナムの国民的英雄の殿堂で故ホー・チ・ミン氏に次いで崇められてきた伝説の将軍、ボー・グエン・ザップ氏の国葬だったのだ。
実際、ベトナム国民の多くは、李首相の訪問のタイミングに不快感を抱き、ベトナム国民の悲嘆に割り込まないよう訪問を延期すべきだったと思った。
「失礼」と「傲慢」という2つの形容詞がよく使われた。
もう1つは「典型的」という言葉だ。
■ハイレベルな中国外交の成果
そんなことに動じず、李首相はベトナムのグエン・タン・ズン首相との会談を「ブレークスルー」として描くことができた。
両首相の会談は、2週間に及ぶ東南アジアでのハイレベルな中国外交を締めくくるものだった。
中国が近年、南シナ海で異論のある領有権主張を繰り返したことで綻んだ関係の修復を目的とした外交攻勢だ。
中国国家主席で、共産党総書記の習近平氏は、インドネシア、マレーシアを訪問した後、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席した。
李首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国10カ国の首脳とともに、ブルネイでの首脳会議に出席した後、タイに向かった。
バラク・オバマ米大統領が、もともとAPEC、ASEAN双方の首脳会議に出席する予定だったが、ワシントンでの予算を巡る対立を理由に出席を取りやめたことで、中国の指導者らの歴訪はより際立つ結果となった。
ベトナムはASEANの中で、中国に対する疑念が最も強い国だ。
何世紀にもわたる敵意と、1979年の短い血みどろの戦争を経た後で領有権紛争がまだくすぶっており、両国の領有権問題は、中国が南シナ海で抱えるASEAN加盟4カ国(ベトナム以外はブルネイ、マレーシア、フィリピン)との領有権紛争の中で最も広範囲にわたっている。
中国とベトナムはともに、南方でスプラトリー諸島(南沙諸島)の領有権を主張しているだけでなく、ベトナムは北方では、中国が1974年に旧南ベトナムの倒れかけた政権からパラセル諸島(西沙諸島)を奪取した時に、自分たちが違法に同諸島から立ち退かされたと考えている。
漁業と石油・ガス探査を巡っても対立が頻繁に起きている。
ところが今年6月、ベトナムのチュオン・タン・サン国家主席の中国訪問中に、中越両国は新たな「戦略的パートナーシップ」協定に署名した。
国境をまたぐ盛んな違法貿易を除いても、中国はベトナムにとって最大の貿易相手国であり、ASEAN全体にとってもそうだ。
李首相のブレークスルーは、その他のビジネスの妨げにならないよう、さらに踏み込んで領有権問題を棚上げしたことだった。
同首相は「海上協力」の作業グループ創設にまで同意した。
中国では、これが2010年の不快な記憶を振り払う助けになった。
ヒラリー・クリントン米国務長官(当時)がハノイで行われた会議で、米国の「国益」に関わると宣言し、南シナ海の領有権紛争に干渉した時のことだ。
中国は、米国の干渉のせいでベトナムとフィリピンがつけあがり、海を巡って中国に対抗するようになったと思っている。
そして今、中国の国営紙チャイナ・デイリー(中国日報)は中国人アナリストの発言を引用し、
「ベトナム政府はすでに、米国政府が一部の島に対する領有権主張を公然と支持してくれることを当てにすることが現実的でないことに気づいた」
と書いた。
この分析には無理がある。
だが、李首相の東南アジア歴訪は習主席のそれと同様に、中国がいかに大きな地域大国になったか、また、オバマ大統領がいかに不在だったかを思い出させた。
そして中国は行く先々で経済的な影響力を見せつけた。
例えばタイでは、李首相はコメとゴムの購入拡大に合意することで、タイが自ら経済的被害を招いた2つの分野で支援を申し出てタイ政府を喜ばせた。
また、習主席はすでに、アジア地域の喫緊のニーズの1つを満たすために、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」を設立する構想を提案している。
ブルネイでは、李首相が先に、対中関係の「ダイヤモンド・デケイド」という自身のビジョンを実現するため、ASEANとの新たな条約の締結を提案している。
■いまだ攻撃を受けるフィリピン
しかし、これがいわゆる「魅力攻勢」だったとしたら、ASEANのある加盟国はまだ、魅力なしで攻撃だけを受けている。
中国は、フィリピンが南シナ海における広範かつ説明不足の中国の領有権主張に異議を申し立て、国連海洋法条約に基づいて仲裁裁判所に提訴したことに激怒しているのだ。
フィリピンを孤立させようとすることは、中国にとって好都合だ。
だが、ベトナムの学者らいわく、ベトナム政府はそのことを重々理解しており、フィリピンの提訴に合流する可能性を排除していないという。
数週間の外交活動は、根本的な現実を変えてはいない。
つまり、東南アジア諸国は
●.中国を最大の貿易相手国として見る
●.一方、米国を安全保障の最大の保証人と見なしている、
ということだ。
しかし、一連の外交活動は、地域の勢力図が変化しているという認識を強めた。
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは論説記事で
「21世紀のアジア太平洋地域のリーダーは米国ではなく中国だ」
と露骨に論じた。
そして、オバマ大統領の会議欠席と政府機関の閉鎖を取り上げ、
「鳴り物入りのアジアへの『ピボット』はむしろ、軍事的関与の過度な重視とのピルエットのように感じる」
と結論した。
■パワーシフトは起きているかもしれないが・・・
中国のメディアは喜んでパワーシフトの印象を助長しており、その議論を東南アジア以外にも当てはめている。
中国の国営・新華社通信は「脱アメリカ化した世界」を唱える論説記事を掲載。
超大国による国債デフォルトの可能性があるなか、
「他国の運命が偽善国家の手に委ねられるような、これほど憂慮すべき時代は終わらせなければならない」
と主張した。
そうした考えは東南アジアで一定の共感を呼ぶが、
米国主導の国際秩序が中国が支配する国際秩序に取って代わられることを望む人はほとんどない。
一部のベトナム政府関係者は、李首相のハノイ訪問のタイミングへの批判は不当だと思った。
李首相は結局のところ、国家が悲嘆に暮れている時に哀悼の意を表することができた。
だが、国民の多くが中国の真意を悪く捉える用意ができているのはベトナムだけではないのだ。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
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