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JB Press 2013.10.08(火)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38828
ミャンマーにも広がる嫌中感情
少数民族も華僑も嫌う現代中国人
この9月にミャンマー東北部を訪問する機会を得た。
バンコクから飛行機でマンダレーに行き、そこから、援蒋ルート(重慶の蒋介石政府に対して英国と米国が軍事物資を運んだ道路)を車で移動した。
東方地域はシャンと呼ばれ、シャン族が居住する。
一時、シャン族は中央政府と対立して武力衝突もあったとされるが、現在、ほぼ平和が保たれている。
旅行中、身の危険を感じたことはなかった。
ただ、援蒋ルートから外れた山岳の道に入ったとき、分隊規模(8人程度)の完全武装した軍人に3度ほど出くわした。
筆者はこれまで、アジアやアフリカで、カービン銃を持ったガードマンをホテルや銀行の入り口で見かけたことはあったが、道で完全武装した集団に出くわしたことはなかった。
それだけ、この地域の治安は不安定なのだろう。
■ミャンマー人をいとも簡単に騙す中国人
そんなシャンで、現在、トウモロコシの生産が急増している。トウモロコシの生産量が増え始めたのは、ここ3年ほどのことと言う。
そして、生産されたトウモロコシは100%中国に運ばれている。
中国において食肉需要が増大し、それを支えるために飼料トウモロコシの生産が増えた。
ただ、現在、ほぼ全ての人が十分な量の食肉を食べるようになり、トウモロコシ需要もほぼ天井に達した感がある。
それなのに、なぜミャンマーから中国にトウモロコシが運ばれているのであろうか。
それは、中国の農民が熱心にトウモロコシを作らなくなったためだと言う。
ここ20年ほど、中国政府はGDPを伸ばすために過剰な公共投資を行ってきた。
それが、近年、ミャンマーと国境を接する内陸部の雲南省にまで及んできた。
雲南省でも土木作業員の賃金は急上昇して、日本円にして月に3万円から4万円になっている。
これは数年前の約3倍だ。
そして、公共事業の現場で働いているのが農民なのだ。
高給の職場が近隣にできたために、農民はトウモロコシの生産に力を入れなくなったと言う。
そのために、現在、減少分を隣国のミャンマーから輸入している。
ただFAO(国際連合食糧農業機関)のデータを見る限り、中国のトウモロコシ輸入量はそれほど増加していない。
それにはこんなカラクリがある。
中国はミャンマーからトウモロコシの輸入を認めていない。
そのために、ミャンマーからの輸入は密輸なのだが、ここのところ、当局は意図的にトウモロコシの輸入を見逃していると言う。
まあ、いつものことではあるが、中国のデータは信用できない。
ただ、ミャンマーからのトウモロコシの大量の輸入はミャンマー東北部の少数民族の生活を大きく変え始めた。
それまで、シャン族の人々は自給的な農業によって細々と暮らしていた。
そこに中国人の商人が現れて、トウモロコシを作れば高値で買い取ると言って回った。
そして、ハイブリッド種子と肥料を売りつけた。
その結果、コメを植え付けていたところや山の斜面が次々にトウモロコシ畑に変わった。
それは貧しかったシャン族に現金収入をもたらし、生活の向上に役立ったことは確かである。
しかし、トラブルも多発することになった。
実ったトウモロコシを、中国人が約束した価格で買わないためである。
相場が変わったなどと言って、最初に約束した価格を値切るのだ。
国境付近までトウモロコシを運ばせておいてから値切り始めて、「いやなら持って帰れ」などと言い放つ悪辣な手口もあると言う。
ミャンマー人は熱心な仏教徒が多く温和な人々であう。
中国人商人は赤子の手をひねるようにミャンマー人を騙すという。
その結果として、シャン族にも嫌中感情が広がり始めた。
■役人の行動に華僑も辟易
ミャンマー人だけではない。
ミャンマー在住の華僑も現在の中国人の振る舞いには眉をひそめている。
それは、官僚が露骨に賄賂を要求し、かつ、税金や賛助金などについて地方の役人たちが勝手にルールを変えるからだと言う。
華僑は商人であるから北京政府を直接批判することはない。
世渡り上手である。
ただ、2世代から3世代ほど前に中国を出た中国人が、現在の中国人に嫌悪感を有していることは確かなようだ。
人々の行動は経済原理とともに、宗教や倫理観によって規制される。
華僑の倫理観は今でも儒教的である。
中国に仏教が根付かなかったように、中国人はあまり宗教的でない。
その中国人が、倫理の根幹に置いていたものが儒教であった。
儒教はエリートの行動規範と言ってもよい。
しかし、共産中国は革命やそれ続く文革によって儒教を否定してしまった。
そのような状況の中で、急速に資本主義経済が動き出した。
一党独裁により、資本主義の行き過ぎを是正するための自由な選挙やマスコミによる自由な批判も封殺した。
現在の中国には、官僚の利己主義を規制する手段はないようだ。
官僚には「自己の地位を利用して儲けるだけ儲ける」という哲学しかない。
上がそうであるから、そのような気分は下々にまで蔓延している。
アジアの中心部で13億人にも及ぶ人々が、極めて利己的な行動を取り始めた。
それに苦しんでいるのは隣人だけはない。
皮肉なことに、現在、中国人が最も信用していないのは中国人だという。
中国人は中国人の作る食品を信用していない。
ミャンマーの華僑はそこに目をつけた。
中国人に安全なミャンマー製の食品を売りつけるというのだ。
まあ、華僑は抜け目がない。
ミャンマーの少数民族、そして華僑でさえも現在の中国人の振る舞いに疑問を持ち始めた。
中国の言動や行動に辟易としているのは日本人だけではない。
アジアの多くの人々が中国人を嫌い始めたようだ。
川島 博之 Hiroyuki Kawashima
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。1953年生まれ。77年東京水産大学卒業、83年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。主な著書に『農民国家 中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』など
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International Business Times 2013年10月15日 16時00分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/50202/20131015/1381820407.htm
人気のミャンマー、ブレーキをかけながら投資
スイスの経済界は鋭い目でミャンマーを観察している。
しかし、スイス大使館開設から1年がたった今、その目には慎重の色もうかがえる。
ミャンマーの状況は依然として不安定であり、責任ある投資をどのように行っていくかという課題を残す。
「今やるか、全くやらないかのどちらかだ。
機を狙えば、逆に機を逃すこともある」。
バルバラ・シュナイダー・メックリ氏はスイス・アジア商工会議所でミャンマーを担当している。
この国に秘められた可能性に疑いを抱く様子は全くない。
「原料が非常に豊かな国。
ミャンマーへの関心はとても大きく、現在の政府は国の発展を促進するためにあらゆる手を尽くしている」
と語る。
豊富な天然資源、インドと中国の間に位置する戦略的に恵まれた立地、5500万人を数える人口、若く安価な労働力。
ミャンマーが企業や投資家のターゲットとなってすでに久しい。
国際的な制裁措置が解除され、「アジアの新しい経済チャンス」という名の扉も大きく開かれた。
旧首都ヤンゴンにあるコンサルタント会社トゥーラ・スイス(Thura Swiss)が発行するニュースレターには「外国からの投資ブーム」という文字が躍る。
2013年4月から8月までの外国からの投資額は、7億3000万ドル(約720億円)と前年同時期の2倍以上だ。
特にアジア圏からの投資が目立つ。
この楽園をめぐる競争にはスイスも参加している。
2012年11月には西側諸国の中でもいち早く「ポスト軍事国」ミャンマーに大使館を開設。
その後は経済関連の派遣団が次から次へと訪れ、両国間の取引額は当時の半年間1500万フラン(約16億円)からずっと右肩上がりだ。
「スイスの企業や企業主とは定期的に連絡を取っているし、問い合わせもひと月に平均4件から5件ある」。
ヤンゴンのスイス大使館で政治・経済を担当しているコリン・アンショ・ピニャーニさんは、スイスインフォの問い合わせに対し文書でこう回答した。
■ミャンマーでは慎重に
「スイス企業にとってミャンマーは魅力の多い市場だ。
国の発展だけでなく、道路、港湾、空港の建設、さらにはエネルギーや遠距離通信のインフラ整備にも貢献できる。
また、観光、医療、消費財などの分野にもビジネスの可能性は多い」
と言うのは、スイス・グローバル・エンタープライズ(元Osec)の広報担当パトリック・ジツメジアンさんだ。
スイスの食品大手ネスレは最近、ミャンマーに子会社を設立する許可を得た。
その数カ月前にはスウェーデン・スイス資本の重電エンジニアリング企業ABBグループが、数年ぶりに電機部品を受注。
しかし、同社の広報担当アントニオ・リジさんによると、現在は「まだ弱火」だ。
平和基金スイスピース(Swisspeace)のリナ・アルーリさんは、スイス企業の多くに慎重な姿勢が見られると言う。
スイスピースはこの春、「ミャンマーにおける経済活動会議」と題するパネルディスカッションを開催した。
「状況はまだ不安定で、銀行などの分野では必要なインフラも整っていない」
■ハイリスクの投資
光るものすべてが金というわけではない。
それはミャンマーも同じだ。
2011年以降、文民政権は改革を推し進め、国際的な援助計画も行われているが、公安政策にはまだ不安定な要素が多い。
また、汚職、官僚機構などの問題もすでに慢性化しており、経済の大部分は依然として軍やその関連企業のコントロール下にある。
ミャンマー当局には人権や環境保護を遵守しながら国を発展させていくだけの余裕がないと指摘する報告も多い。
「毎週毎週デモがある。
劣悪な労働条件や土地の取り上げ、強制移住、少数民族の権利の侵害などに抗議しているのだ」。
こう話すのは、スイスの六つの主要NGOから成るロビー団体「南同盟(Alliance Sud)」のミシェル・エッガーさんだ。
水力(ダム)、ガス、石油、衣料といった分野の投資は、人権や社会・環境水準の面で大きな危険をはらんでいるとエッガーさんは言う。
在ミャンマーのクリストフ・ブルゲナー・スイス大使も
「素早く利益を得ようとして何にでも投資をすると、多大な損害を被る恐れがある」
と警告する。
■経済と人権
スイスはこのような悪影響を避けようと、さまざまなレベルで戦略を練っている。
最も大切なのが、外交活動、平和政策、開発協力、そして経済省経済事務局(SECO)による経済協力を一つ屋根の下で調整する「融合大使館」の存在だ。
「大使館ではプラットフォームを作り、スイス企業と定期的に連絡を取り合っている。
こうして、人権や社会・環境水準と歩調を合わせた経済発展の大切さを強調している」
と経済事務局の広報官イザベル・ヘアコマー氏は言う。
キリスト教民主党のアンヌ・セドゥ・クリステ上院議員はスイス政府に対し、ミャンマー投資における透明性を求める質問を提出した。
スイスのこの戦略について、同議員は「興味深い」と評価する。
しかし、重大な人権侵害や暴力、根深い民族紛争といった問題を挙げ、
「やらなければならないことはまだたくさんある」
と強調する。
■企業の責任
米国は今年5月以降、ミャンマーで新たな投資を行う場合は必ずその旨を届け出ること、また投資額が50万ドル(約4920万円)を超える場合は年間報告書を提出することを義務づけた。
各企業は、人権、汚職、環境への影響に対する政策および活動手順の公開を求められている。
「それに対し、スイスの対策は任意でしかない」と南同盟のエッガーさんは不満をもらす。「ミャンマーに投資するスイス企業すべてに対し、拘束力のある最低水準を導入するべきだ」
ヨハン・シュナイダー・アマン経済相によると、スイス政府は下院外務委員会の要請を受け、現在、人権や環境に関する注意義務の検査導入に向け、種々の方策を吟味しているところだ。この規定はミャンマーだけでなく、在外スイス人の活動全般に適用される予定だ。
ルイジ・ヨーリオ,swissinfo.ch
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