●日本とASEANの首脳会議「中国との対話のドアはオープン」
●中国とASEAN各国首脳、南シナ海問題での対話促進を確認 - TBS News
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ウォールストリートジャーナル 2013年 10月 11日 16:25 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303836304579128673995969740.html
安倍首相、東アジアサミットで注目度高める
【バンダルスリブガワン(ブルネイ)】オバマ米大統領が今週東南アジアで開かれた幾つかの首脳会議に欠席したことで、影響力を拡大する中国の存在感が大きくなるとみられたが、
スポットライトは東南アジア諸国との関係緊密化を望み、自国の力の及ぶ範囲を拡大しようとしている別の首脳に当てられた。
日本の安倍晋三首相だ。
アナリストらは、オバマ大統領の不在で、重要な安全保障上の問題を提起するにふさわしい首脳が少なくなったと指摘していた。
インドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)フォーラムとブルネイでの東南アジア諸国連合(ASEAN)会合にはケリー米国務長官が出席した。
オーストラリア国防大学のカーライル・セイヤー名誉教授は「例外は日本の安倍首相だ」とし、
「オバマ大統領の欠席で(中国の国家主席)習近平氏にスポットライトが当たるという直感的分析は修正が必要だろう。
一部のスポットライトは安倍氏に当たった」
と述べた。
安倍首相はもともと、
東南アジアの一部の国が天然資源の豊富な南シナ海での領有権をめぐり中国の強硬姿勢に悩まされているため、強固な日本と東南アジア関係をさらに強化する決意だった。
東シナ海ではブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、それにベトナムが一部の領有権を主張しているのに対して、中国はほぼ全域の領有権を主張している。
安倍首相はこの1週間の各種会議でこれまでになく強い姿勢を示したが、
これによって日本は領有権問題では後に引かないとのメッセージを中国にあらためて送った。
セイヤー氏は、日本の景気が回復し始めたこと―その一部は「アベノミクス」によるものだ―が安倍首相の評価を高め、
また日本が以前から東南アジア向けの主たる支援国であることや日本が米国とオーストラリアと戦略的同盟関係にある
こともその背景にあると指摘した。
昨年のASEAN会合では中国の同盟国とその他の加盟国が南シナ海問題をめぐって対立した。
安倍首相は今回の東アジアサミットで他の首脳に対し、南シナ海問題は
「地域の平和と安定に直接関係し、世界の海洋秩序に影響するものであるため、国際社会が関心を抱いている」
とし、
「全ての関係国は法の支配に従い、一方的な行動を控えるべきだ」
と強調した。
中国はこの問題で当事国同士で解決することが望ましいとしている。
フィリピンは今年1月、中国との領有権問題で国際仲裁裁判を請求すると発表して、中国をいら立たせた。
首相はまた、海洋での紛争を処理するための法的拘束力を持つ行動規範を構築する話し合いの進展を注視していると述べるとともに、早期にこれがまとめられることを希望していると語った。
この行動規範は10年以上にわたって合意できずにいる。
ASEANと日本の首脳会議を受けて8日に発表された共同声明は初めて、航行の自由の重要性と国際法に従った紛争解決の必要性を指摘し、日本が南シナ海問題で立場を明確にしようとしていることをうかがわせた。
11日にマレーシアでナジブ首相と会談する予定のケリー長官は、紛争解決のための平和的交渉と国際法の順守の必要性を強調し、
「大国も小国も、全ての国の権利は尊重されなければならない」
と述べた。
同長官は台風の影響で、フィリピン訪問を延期した。
東南アジアでより自己主張の強い役割を果たすことは安倍政権の最重要事項の一つだ。
4-6月の国内総生産(GDP)が3.8%となるなど経済の好調なことも要因となって同政権は日本国内で60%強という高い支持率を得ており、安倍氏は外交政策でより強い姿勢を見せている。
例えば、日本はフィリピン海岸警備隊に船舶と通信システムを供与することを約束した。
日本は今年5月、経済開発を支援するための一連の金融措置を発表し、また最近では、米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め策転換見通しで市場が不安定になったインドとインドネシアに流動性を提供する取り決めも打ち出した。
安倍氏は昨年末に首相に就任して以来、カンボジアとラオスを除く東南アジア諸国を訪問し、日・ASEAN友好協力40周年の特別首脳会議が日本で開かれる12月半ばまでには、この2国も訪問する予定だ。
安倍氏の果敢な経済政策と国際舞台での力強い役割を果たそうとする意欲は成果をもたらしつつあるようだ。
甘利明経済再生相は記者団に対して、最近の首脳会議では、安倍首相への1対1の首脳会談の要請は過去15年間の日本のどの首相よりも多いと述べた。
南シナ海問題における日本の強い姿勢から日本に仲裁役を期待するのは単純すぎるだろう。
日本製の狙いは国内にある。
日本が東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を国有化して以来、中国と日本との政治関係は緊張が高まっている。
中国はこの諸島の領有権を主張し、日本の抗議にもかかわらず監視船をその領海内に派遣し続けている。
同諸島に関する日本政府の姿勢は、解決すべき領土紛争はないというものだ。
しかし、リアンクール岩礁(日本名・竹島、韓国名・独島)のケースでは、日本は韓国を国際法廷に引き出そうとし、紛争を抱える他の国々にも同様の行動を取ってもらいたい考えだ。
もし他の国が中国に対して一方的な措置を取れば、それは日本の立場を弱める可能性がある、と日本政府は懸念している。
地域安保をめぐる日本の強い姿勢に中国は神経質になっている。
岸田文雄外相が先週、バリ島でのAPEC会合で航行の自由を守ることの重要性に言及した際、中国はこれを非難した。
同国外務省の秦剛・報道局長は6日、「個別の国が自らの政治的目的を達成しようとするものだ」とし、「このような方法では人心を得られず、成功することはない」と述べた。
ただ、中国はオバマ大統領の不在で利益を得ることができた。
国際会議で米大統領に当てられるスポットライトは通常、他の参加者をほとんど脇役としてしまうのだが、7日にバリ島で開かれた経済界首脳らの会合では、習近平国家主席が特に心のこもった拍手で歓迎されたのだった。
この会合にはケリー長官やプーチン・ロシア大統領らも出席していたが、ある日本からの出席者は
「習近平氏とプーチン氏のメッセージは、アジアのために何ができるかという点で非常に明瞭だった。
ケリー氏からは特別なメッセージはなかった」
と語った。
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【参考】
「中国の尖閣問題処理の失敗」について別の稿で書いていますので、その没頭部分をコピーしておきます。
突き合わせると上の記事がわかりやすいかもしれません。
『
中国の尖閣失敗がもたらした5つの目のもの?:日露平和条約へのロシアの意欲
中国の尖閣問題処理の失敗は、
すくなくとも4つ、もしかしたら5つのものをもたらしたのかもしれない。
①.1つは、封印を解いて、眠っていた日本という小竜を甦らせてしまったこと
第二次世界大戦が封印して眠らせた小竜のシッポを中国が踏んづけてしまったことである。
アジアで唯一の「戦う経験」をもった竜を目覚めさせてしまったのである。
中国は「戦争経験がない」という圧倒的なハンデを持っている。
②.2番目は、民衆の力を覚醒させてしまったこと。
官製デモを企画したことで、民衆の力を覚醒させてしまったこと。
それが直ちに社会不満の引き金になり、当局に向けられ暴動化する可能性が出てきたこと。
つまり、国内がいつでも火のつく燎原となってしまったこと。
ためにすべてのデモや集会は危険行為とみなすことになってしまったこと。
③.3つ目は、周辺諸国の動きを軽くしてしまったこと
これまで中国の強盛外交に怯えて口をつぐんでいたが、日本の復活によってその口を開けはじめたこと。
さらには進んで中国と日本を秤にかける素振りをとるようになってきたこと。
④.4つには、日本をアメリカのアジアにおける代理人にしてしまったこと。
中国の台頭によってアメリカは中東とアジアとの二面で動かねばならなくなった。
しかし、それには無理がある。
同盟関係にある韓国はいともアッサリ中国化してアメリカを裏切った。
しかし日本は中国に強硬に対峙した。
これによって、日本に対する信用はハイレベルとなった。
そこで日本をアジアにおけるアメリカ代理人にすることになった。
ために中国はアメリカの前に日本というやっかいものを相手にしなければならなくなったこと。
つまり「世界の米中関係」の前に、「アジアの日中関係」が立ち塞がってしまったことである。
さて5つ目だが、それが下記の記事。
これは是とでるか非とでるかはわからない。
だが5つ目の可能性として載せてみる。
⑤.ロシアに日露平和条約締結の機運を作ったこと。
<<略>>
』
『
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年10月15日
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2013-10/15/content_30300852.htm
対中国戦略で食い違い 日米同盟の強化、言うは易く行うは難し
日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)会合が今月3日、東京で開かれた。 「日米防衛協力指針(ガイドライン)」の見直しが重点的に議論され、日米の同盟強化の動きに再び世界の注目が集まっている。
シンガポール紙・聯合早報が伝えた。
日増しに世界の政治、経済の中心となりつつあるアジア太平洋地域で大きな構造調整と変革が起ころうとしている。
中国が急速に台頭し、米国の国力が相対的に低下する中、海洋紛争や朝鮮半島などの問題が過熱している。
そのため米国と日本は同盟関係強化の強い動機があり、調整の大きな方向にも共通の認識があるが、その非常に緊密な裏に中国への認識、各自の利益要求および対応方式などカギとなる問題において鮮明な食い違いが存在する。
ガイドライン見直しの道のりは困難に違いなく、最終結果も日米両国の思い通りになるとは限らない。
①.第一に日米で中国の「脅威」に対する認識が異なり、両国の対中国戦略の目標は共存できない。
一般的に軍事同盟には「仮想敵」や特定の対象が存在し、中国の台頭と軍事力近代化の急速な発展が日米同盟が防衛協力の調整を刺激する最も重要な要素となったことは間違いない。
両国はそれを隠し立てすることなく、立場も一致しているが、同調できていないのが戦略目標だ。
◇中国は米国の将来的懸念
米国にとって中国は「将来的懸念」であって、当面の重点は備えにある。
自らの国力が衰退する中、より大きな責任を担い、より大きな役割を発揮するよう日本を促し、中国を牽制するのは悪くない選択だ。
しかし中国が旧ソ連とはかなり異なり、中米関係と米ソ関係の違いもかなりある。
中米は今でも新型大国関係を構築する努力を続けている。
日本の向こう見ずによって中国との「望まない衝突」に巻き込まれるのを米国は決して望んでいない。
現在の中米日の三角関係は極めて敏感で、攻撃的な日米同盟はより熾烈な軍拡競争を招くに違いない。
軍事支出の削減に取り組んでいる米国はそれを望まない。
米国がその「度」と「バランス」を把握しなければ、アジア太平洋の安全保障の柱とみなしていた日米同盟が裏目に出て、米国の安全保障を侵蝕する可能性がある。
◇日本は中国を目の前の懸念とみなす
日本にとって中国は「目の前の懸念」とみなしている。
そのため日本は米国の「度」と「バランス」が理解できない。
総合的実力を急速に強める中国は日本を焦らせ、東アジア近海で活発になっている軍事活動も日本にプレッシャーを与え、「対米接近、対中牽制」が唯一の選択のようにみえる。
問題は米国の支援が大きく留保され、渇きが癒されないことだ。
釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題の激化を背景に、日本は米国が早急に手を打ち、新ガイドラインで的確性と抑止力が高まるのを望んでいる。
②.第二に、双方の国際的身分、地位は異なり、国家利益の境界に構造的ズレが存在する
世界の覇権国家である米国の対日政策はアジア太平洋戦略、さらには世界戦略の重要な構成部分であり、米国も世界的範囲で日本の「余剰価値」を搾取してきた。
これは米国のガイドライン見直しの主要目的の一つでもある。
一方、日本の関心の重点はまず日本周辺で、東アジアがその伝統的安全保障の利益のほぼすべてであり、米国への世界的範囲における支援と引き換えに、東アジアの安全問題において米国が日本の力になってくれるのを期待している。
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