2013年11月20日水曜日

日中指導者、互いに強硬姿勢を崩さず:「争いは“尖閣諸島”にとどまらない」

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●18日、環球時報は、「日中間の争いは尖閣諸島(中国名:釣魚島)だけにとどまらない」とする記事を掲載した。資料写真。


レコードチャイナ 配信日時:2013年11月19日 22時20分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79347&type=0

日中指導者、互いに強硬姿勢を崩さず
=「争いは“尖閣諸島”にとどまらない」―中国メディア

 2013年11月18日、環球時報は、「日中間の争いは尖閣諸島(中国名:釣魚島)だけにとどまらない」とする記事を掲載した。

 かつて野村証券の研究員を務めた専門家・佐々木芳邦氏は、日中関係は“政冷経熱”の状態に戻れば十分であり、日中関係改善の突破口は経済と民間の努力に頼るしかないと考えている。
 肝心なのは両国政府が尖閣諸島問題をしばらく棚上げし、靖国神社の問題を適切に処理すると同時に、メンツを捨て、真剣に経済発展と国民の経済利益を考えることである。

 南アフリカ国際問題研究所の研究員ドレーパー氏は“GEGAfrica”のウェブサイトに寄稿した文章の中で、
 「中国は、日本の“失われた10年”を利用して急速に発展したが、安倍首相は中国との全面的な対抗を打ち出し、再び優位に立とうと試みている。
 日中の争いは領土主権などという簡単なものではなく、2つの隣接する大国の政治、軍事、経済の総合的な争いとなっている。
 日中指導者は互いに強硬姿勢を貫いており、妥協は難しい」
と指摘。

 専門家は、
 「政治の冷え込みが長期化した後は、経済に影響して“政冷経涼”を招く。
 政治関係を挽回するカギは、まだ安倍首相が握っている。
 経済・貿易関係の挽回は政府の出方次第。今後の安倍政権の動向に注目が必要だ」
としている。


 日本は「政冷経涼」を「良」としている。
 中国は「政冷経熱」を「良」としている。
 そのため、
 中国は日中の経済往来を元に戻したいとし、日本からの経済視察団をむかい入れた。
 日本は日中の経済往来を抑制し、その分を他国に振り向けたいを望んでいる。
 とすると、安倍さんが鍵をにぎることになる。


JB Press  2013.11.20(水)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39220

中国と日本の対立、このまま進むと衝突
(2013年11月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


●日中関係の緊張が続き、不測の事態が生じるリスクが高まっている〔AFPBB News〕

中国が先週発表した経済改革を巡る議論がかまびすしい中、見過ごされがちだった重要な変化が1つある。
 中国政府が軍事、諜報および国内治安の各機構を連携させる国家安全委員会という組織を設置することにしたのだ。

 米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルにしていると言われているが、時を同じくして日本でも安倍晋三首相の率いる政権が国家安全保障会議(日本版NSC)の創設に動いている。

 平時であれば、軍事・安全保障機構のこのような近代化は懸念材料にはならないだろう。
 しかし、今は平時ではない。
 中国と日本はこの1年間、いくつかの無人島
――日本では尖閣諸島、中国では釣魚島として知られている――
の領有権を互いに主張し、危険な軍事的にらみ合いを続けている。

■危険なのは偶発的な衝突が起き、双方が引くに引けなくなるリスク

 最近では、中国の領空侵犯に対応して日本の戦闘機が緊急発進(スクランブル)を1週間のうちに3度行うという出来事があった。
 また、一方では中国が、最近実施した海軍の実弾演習の現場に日本の船舶が挑発的な接近を行ったと抗議している。
 このように緊張が高まっているだけに、両国政府による安全保障機構の手直しはより不穏な空気を漂わせるものとなっている。

 中国や日本が実際に戦争を望んでいるとは考えにくい。
 それよりも、問題の島々の周辺における見せかけの軍事行動が偶発的な衝突につながってしまうリスク、そして両国政府がそれぞれの国家主義的なレトリックにとらわれ、引くに引けなくなってしまうリスクの方が大きい。

 今ではどちらの国も、相手が無責任な行動を取っているとか国家主義が制御不能になっているなどと非難し合うのが普通になっている。
 そしてどちらの国も、もし相手が手を出してくれば、両国が争っているあの無人の岩礁の領有権を守るために軍事力を行使することも辞さないと述べている。

 筆者は先日北京で、中国人民解放軍のある将軍から、日本が軍国主義に走ることで1930年代に犯した間違いを中国は決して犯さないという話を聞いた。

 その数週間前には東京で、日本のある政府高官が、同じ歴史から全く異なる結論を導いているのを耳にした。
 「中国は、我々が1930年代に犯したものと全く同じ過ちを犯しつつある」
とこの人物は述べ、
 「中国は、軍部がシビリアンコントロール(文民統制)から外れるのを容認しつつある。
 そして、太平洋における米国の軍事力に挑戦している」
と指摘していた。

■世界を巻き込む紛争に発展する恐れ

 中国と日本、すなわち経済規模で世界第2位と第3位の国が紛争を始めれば、それは明らかに悲惨なものとなる。
 また、世界中を巻き込む紛争にすぐに発展してしまう恐れもある。
 米国は、日米安全保障条約を通じて日本を防衛することを約束している。

 そして、米国は尖閣諸島の主権の帰属について公式の立場を取っていないものの、尖閣諸島が日本の施政下にあることは認めている。
 このことは、この島々が安保条約の適用対象であることを意味しているのだ。

 この争いの背景には、中国の経済力が拡大し続けているという状況がある。
 最新の見通しによれば、中国は2020年までに世界最大の経済大国になる公算が大きい。
 米国が1880年代から保有していた称号を奪い取ることになる格好だ。

 また、中国の軍隊はまだその規模と洗練度において米軍に大きく水をあけられているものの、米国防総省が支出の削減に取り組んでいる一方で、中国の防衛費は急速に伸びている。

 日本はつい先日、防衛予算の小幅な増額を発表した。
 しかしこの国は既に巨額の債務を抱えており、中国と同じペースで防衛費を増やせないことを自覚している。

 こうした経済的、軍事的影響力の変化は、将来の勢力バランスに関する不確実性を生んだ。
 不確実性が存在すると、世界の強国は互いの限界と能力を試す衝動に駆られる。

■歴史の苦い遺産

 また、歴史の苦い遺産によって、別の危険が加わっている。
 中国では、習近平国家主席が、共産党の主たる任務の1つは中国が味わった歴史的な屈辱を克服することだと主張している。
 そうした屈辱の中でも最たるものが日本による侵略だ。

 だが、日本では、安倍政権が過去について、以前よりより国家主義的で、謝罪の姿勢を弱めたレトリックを採用している。
 両氏にとって、論争は極めて個人的なものだ。
 安倍首相が師とする祖父は1930年代に、折しも習主席の父が中国共産党の部隊の一員として日本軍と戦っていた時に、日本の占領下にあった満州を統治していたからだ。

 中国と日本が相互に破壊的な衝突を避けたいのであれば、双方が方向転換する必要がある。
 中国側は反対しているが、日本政府と中国政府の間に有事のホットラインが設置されれば、大いに役立つだろう。

 だが、日中両サイドでもっと大きな動きが必要だ。
 すなわち、双方の不安と憎悪の正当性を認めることだ。

■衝突を避けるために必要なこと

 安倍政権は中国の国家主義に対する不満を並べながら、日本自身の欠点を放置してきた。
 歴史に対する日本の態度に気分を害しているのは中国人だけではない。
 その他多くのアジア諸国も同様に愕然としている。
 アジア地域において日本の相対的な力が容赦なく衰えている時に、同国が国家主義的な態度を取る余裕はない。

 だが、日本はまさに中国の台頭に怯えているがために、弱さと見られかねない対策を講じることを恐れている。

 対照的に、中国は寛大な態度を示す余裕がある。
 何しろ中国は台頭する大国だ
 そのため中国としては、日中間にどんな論争があろうとも、アジアの新たな政治秩序の中で日本が安全かつ立派な地位を占めることを受け入れる、ということを完全に明確にしなければならない。

 そうしたステップは、日本政府に極めて大事な安心感を与えるし、中国政府にとっても多大な利益になる。
 というのも、平和が広く行き渡っている限り、中国の台頭は途切れずに続くからだ。

By Gideon Rachman
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「WEDGE Infinity」 2013年11月20日(Wed) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3356?page=1

習近平が見せた対日政策の「変化」
強硬路線と経済・民間交流の拡大
一枚岩ではない共産党

 11月9~12日に開かれた中国共産党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で「国家安全委員会」の創設が決定した。
 習近平国家主席は、3中総会直後、国家安全委について、国営新華社通信を通じてこう説明した。

 「わが国は対外的には国家主権や安全、発展の利益を、国内的には政治・社会の安定を守るという二重の圧力に直面している。
 国家安全工作の集中的かつ統一した指導を強化することは、当面の急務となっている」

 国家安全委創設に関して、「国家主権」の維持を挙げたのは、沖縄県・尖閣諸島をめぐり対立する日本を念頭に置いたものであるのは間違いない。
 しかし複数の中国政府筋によると習を筆頭に最高指導部・政治局常務委員7人全員が顔をそろえ、周辺外交に関して初めて開いた10月下旬の重要会議「周辺外交工作座談会」で、習近平は対日関係の議論に長時間割き、「今の状態が続くことは双方にとって不利益だ」と強調。
 その上で「経済のほか、民間の文化・人的交流などを拡大させなければならない」と関係改善を指示した。

 15日で習近平の総書記就任からちょうど1年。
 習は、尖閣対立で漂流する日本との関係を微妙に転換させたもようだが、
 尖閣問題が壁となり予断を許さない状況は当分続きそうだ。

■3中総会開幕日に陳情者1000人が抗議

 国家安全委設立に関する構想が出るのは今回が初めてではない。
 1990年代後半に江沢民国家主席(当時)は、米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルに、外交・安全保障の司令塔を構築しようとしたが、既に党・政府・軍のトップにあった江沢民が国家安全委を統括すると、絶大な権限を持つことになることへの懸念が強かったほか、当時はさほど緊急性もなかった。

 しかし今は確実にその緊急性が高まっている、というのが習近平の考えである。
 習は新華社を通じてこうも語っている。

 「国家の安全と社会の安定は、改革・発展を実現する前提であり、国家・社会の安定があってこそ、改革と発展は絶えず推進する。
 (中国では)予見可能あるいは予見困難なさまざまなリスク要因が明らかに増えているが、われわれの安全対応メカニズムではもはや国家安全の必要性に適応できなくなっている」

 北京・天安門での突入・炎上や山西省共産党委員会前での連続爆発という不穏な事件が相次いだほか、全国各地で発生する抗議活動や暴動は年間18万件以上に達している。
 さらに3中総会開幕日の11月9日午前、腐敗を取り締まる監察省の前には、幹部の腐敗などに抗議する1000人以上の陳情者が集結した。
 同総会を控え、北京市内に大量の警察を配置して陳情者を次々と拘束する中での異例の「集結」に指導部が衝撃を受けたのは容易に想像できる。

 「きょうから3中総会が始まる。われわれは幹部の腐敗を訴えるため全国から自発的に集まった」。
 監察省前で山東省から来た陳情者はこう語った。

■国家安全委員会は「中国版KGB」

 底層にいる庶民は、幹部の腐敗が深刻化し、公正な司法でこれを裁けない政治・社会システムに不満を爆発させている。
 習も腐敗で「共産党も国家も滅びる」と繰り返し、危機感を募らせている。

 習が宣言した国家安全委も「中国版NSC」との見方が出ているが、どちらかと言うと「中国版KGB」ではないか、という観測が強い。
 KGBとは、冷戦時代に情報機関・秘密警察として絶大な権限を誇った旧ソ連の国家保安委員会のことである。

 中国の国家安全委は、外交・安保色よりも公安・国家安全色の強い機関というわけだ
 つまり「対外政策」より「国内統治」を念頭に置いている。
  トップの主任には習が、副主任には公安・司法、テロ対策を統括する孟建柱・党政法委員会書記らが就く予定で、下に設置される弁公室の秘書長には傅政華公安次官(北京市公安局長)が就任するとの見方が浮上している。

■「集権」強める習主席

 北京の著名人権活動家・胡佳氏は国家安全委員会創設によって
 「中国は『警察大国』から『警察帝国』になった
と警戒感を露わにし、こう語った。

 「国内の圧力はどんどん高まり、習近平は強力かつ暴力的な手段で抑え付けている。
 力で安定を維持する『維穏』はエスカレートしている。
 国家安全委員会はKGBより権力も規模も大きくなる。
 『政法委員会』を巨大化させたものだ」

 習近平指導部が発足して以降、体制に異を唱えるなどして拘束された人権派の活動家や弁護士、記者らは既に200人以上に達し、その数はどんどん膨らんでいる。
 指導部は3中総会で「全面的な改革深化」を打ち出したが、その裏で政治的な引き締めを強めており、
 「たった1年で胡錦濤前政権後半5年間の拘束者を大きく超えた」(人権活動家)
とされている。

 習指導部は「政左経右」(改革は経済が中心で、政治は引き締め)がより鮮明になっており、
 「政治面ではさらに集権を強め、経済面では既得利益集団を微調整するだけにとどまる
という人権派弁護士・唐吉田氏の解説は的を射ている。

 人権派弁護士の劉暁原氏も「国家安全委員会は国内での引き締めを強めるためのものだ」と解説した。

■「尖閣」対立も国家安全リスクか

 3中総会の結果を一言で言い表せば、習近平への「集権体制」確立ではないか。
 「二重の圧力に直面している」と表現した習の心中は、「二重どころではない」危機意識にさいなまれており、共産党トップである自身にすべての権力を持たせることで危機を乗り切ろうとしているのだ。

 そして国家安全委創設が「急務」になった時代の変化に対し、国内の安全と対外的な安全が密接にリンクする時代が到来したという強い認識を持っている。

 党幹部養成機関・中央党校の機関紙「学習時報」(11月18日)は、
 「わが国の国家安全を守る『力』が政府や軍の各部門に分散し、権威のある国家級の安全指導体制が整っていない。
 これでは迅速な対応は困難だ」
と指摘。
 「領土主権、大災害、テロ攻撃などに有効に対処し、国家安全に対する脅威対応能力を増強させなければならない」
と訴えた。

 同紙はまた、インターネット技術の進歩を挙げ、
 「情報活動と安全問題は過去と異なる特徴を呈している」
としてサイバー攻撃やネット情報も、リスク要因として挙げている。

 同紙はこうも指摘した。
 「わが国の周辺、特に海上の安全問題が直面する現実的な脅威は上昇の趨勢にある」。
 これは尖閣諸島などを念頭に置いたものだ。
 尖閣諸島をめぐる日本との対立も、国家安全を脅かすリスクととらえ、国家級の協調体制が必要と見ている表れである。

■「周辺外交工作座談会」で対日関係について長時間議論

 では、日本は国家安全を脅かす「危機」なのか
 決してそうでないところに、習近平が対日政策で頭を痛める要因がある。

 10月24~25日に開かれた「周辺外交工作座談会」は「新中国建国以来、初めて開かれた極めて重要な会議だ」と解説するのは中国外務省関係者だ。
 この関係者はこう続ける。

 「国境を接する14カ国、海でつながる6カ国、ASEANなど重要な9カ国の計29カ国の大使が出席した。
 習氏は周辺外交のフレーズとして『親』『誠』『恵』『容』の4文字を掲げた」

 「親密」「誠意」「互恵」「寛容」という意味だ。
 また座談会にはこのほか、国有企業や金融機関の首脳も出席し、経済交流も重要性も説いた。

 この座談会を伝えた国営新華社通信などには一切、対日関係について議論したことには言及していない。
 しかし中国政府筋は
 「対日関係をどうするか、最も時間を掛けて討議され、政治局常務委員7人の最も関心の高い問題だった
と明かした。

■「今の対立状態が続くことは双方にとって不利益」

 複数の中国政府筋によれば、座談会では習近平からは「対日」に関してこうした指示が出されたという。

★.「今の対立状態が続くことは中日双方にとって不利益だ」
★.「日本との関係は、周辺外交の中で最も重要な一つだ」
★.「経済、文化、人的交流を拡大しなければならない」

 国家安全委員会創設の経緯から見ても、尖閣問題が中国にとって譲れない「核心的利益」である原則には変化はない。
 周辺外交工作座談会では尖閣問題を解決する努力を続けると同時に、経済・民間交流を拡大させる方針を示したものだ。

 複数の中国外交筋によると、
 中国政府は最近、尖閣の領有権に関して日本側に対して「お互いの立場が異なる」ことを認めるよう求めている。
 尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しないという立場の日本政府は拒否しているが、
 領土問題や係争の存在を認めるよう迫った頃と比べて柔軟化してきているとの見方は日本側にもある。

 中国政府は、今夏頃までは日本政府の
(1).領土の係争があることを認めない、
(2).(過去の日中指導者が合意したと中国が主張する)領有権「棚上げ」を認めない、
(3).領土問題の対話に応じない
-という基本的立場を「三つのノー」と反発を強めていたが、最近ではこの主張も影を潜めている。

■鈍くなった「海警」の動き

 10月初めには中国外務省で対日政策を統括する熊波アジア局副局長が日本を極秘裏に訪問し、日本外務省高官らと尖閣問題の打開に向けて協議を行った。

 時事通信が10月15日にこれを報じた直後、中国外務省の華春瑩副報道局長は翌16日の記者会見で「具体的な報道の状況は私が知る限り存在しない」と全面否定したが、11月12日には新華社記者が同じ質問を行ったところ、秦剛報道局長は「中日双方は一貫して接触を保持している」と事実上認めた。

 単に最初に答えた華春瑩が事情を知らなかっただけなのか、中国高官がわざわざ日本まで足を運んで尖閣問題を協議したことが国内で明らかになると、「弱腰外交」への批判が集中すると懸念したのか、定かではない。

 しかし日本の中国専門家の間からは、極秘訪日があった9~10月にかけて中国政府の対日政策に微妙な「変化」が表れたとの見方は出ていた。

 尖閣諸島沖の日本の接続水域での航行や領海侵入を繰り返した中国海警局の海洋監視船「海警」の動きが鈍くなったのだ。

 9月19日に2隻が領海に侵入し、同日、接続水域を離れると、4隻が領海に入ったのは8日後の27日。
 その後接続水域を航行し、10月1日にまた領海に侵入。
 2日に接続水域を離れると、次に同水域にやって来たのは19日で、実に17日ぶりだった。
 領海を侵犯したのは28日で、26日間も侵入がなかったことになる。

 これは日本に対する一定の柔軟な「メッセージ」ではないか、という期待感が日本側からは相次いだ。
 9月24日には中国経済界首脳約10人が来日し、菅義偉官房長官とも会見した。
 経済界訪日団に参加した企業の関係者は「会社のトップの意向で決まった」と明かす。
 つまり党・政府からの指示があったとの見方が強いのである。

■外務省高官の極秘訪日

 ちょうどその時期に行われた副局長の極秘訪日と日中協議だが、結論から言うと、
 尖閣諸島をめぐる
 「異なる立場」を認めるよう促した中国側の提案を日本側は拒んだ
ため、交渉は平行線をたどったもようだ。

 中国政府は、「私の対話のドアは常にオープンだ」と繰り返す安倍晋三首相との首脳会談に関しては「環境整備」が必要と考えている。
 つまり習近平なり首相・李克強が安倍と会談する前に、外交レベルで尖閣問題に関して「コンセンサス」が不可欠との結論に達している。

 しかしコンセンサスを作るための外交レベルの交渉は一向に進んでいない。
 複数の中国政府幹部によると、中国側が持つ不満は以下の2点に集約されている。

★.「安倍首相の対中強硬発言は雰囲気を壊している」
★.「安倍首相を中心に官邸主導のため外交交渉が進まない」 

■激化する対日「路線対立」

 また習近平が「周辺外交工作座談会」で対日関係改善の模索を指示したが、中国共産党・政府内も、対日関係で「一枚岩」ではないのも現実だ。

 人民解放軍や国家海洋局など対日強硬派は、言うまでもなく尖閣諸島での妥協は一切許さない保守派であり、同座談会翌日に中国国防省報道官が中国軍の無人機を日本が撃墜すれば「一種の戦争行為だ」とけん制する談話を発表し、対日強硬姿勢を続けている。

 しかし中国外務省内部でも路線対立が存在する。
 「王毅外相らが基盤とするアジア局は、日本との経済交流をもっと重視して関係改善を進めるべきとの意見だが、楊潔チ国務委員(前外相)や報道局は尖閣問題で妥協すべきではないという立場だ」(中国外交筋)

 「周辺外交工作座談会」と「国家安全委員会創設」。
 習近平の2つの政策から見えてくる対日戦略は、
 尖閣問題で妥協せず強硬路線を打ち出しながら、
 その中に経済・民間交流の入り込む「空間」を広げていくというものではないか。

 だが老チャイナウオッチャーはこう警告した。
 「決して『政冷経熱』(政治関係は冷たいが、経済関係は熱い)にはならない。
 尖閣問題が解決せず、日本側が軟化しないと、経済関係にも影響するだろう

城山英巳(しろやま・ひでみ) 時事通信北京特派員
1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。外信部を経て11年8月から北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了、現在、同大学院博士後期課程在籍中。著書に『中国臓器市場』(新潮社)、『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、近著に『中国人一億人電脳調査 共産党より日本が好き?』(文春新書)がある。


 日本が強気なのは、中国との経済関係を絞りたいという意識があるからだ。
 ウオッチャーや評論家は「まず、ゼニ」から入る。
 「尖閣問題が解決せず、日本側が軟化しないと、経済関係にも影響するだろう」 
なら、それが最も望むところであるとするのが日本の立場であろう。
 だから強気に出ている。
 日本は両国の経済関係の低下を歓迎しているが、
 中国はなんとかその関係を維持したいと思っている。
 それが両国のスタンスにあらわれている。

 また同時に日本は中国が物理的に強く出てくれることを望んでいる。
 「尖閣諸島沖の日本の接続水域での航行や領海侵入を繰り返した中国海警局の海洋監視船「海警」の動きが鈍くなった
というのは、日本にとって困ることなのである。
 中国が強く出てくれることによって、受け身をとり、其の力を利用して防衛戦略を固めていく、というのが今の日本のやり方である。
 海外メデイアが
 「中国と日本の対立、このまま進むと衝突」
なんて言ってくれることがなによりのエネルギーになるのである。
 中国が決して衝突してこないということは分かっている。
 だから、

中国政府は、今夏頃までは日本政府の
(1).領土の係争があることを認めない、
(2).(過去の日中指導者が合意したと中国が主張する)領有権「棚上げ」を認めない、
(3).領土問題の対話に応じない
-という基本的立場を「三つのノー」と反発を強めていた

が、いまは

 尖閣諸島をめぐる「異なる立場」を認めるよう促した中国側の提案

にまで、後退しているのはそのあらわれである。
 しかし、日本側はそれを拒んだという。
 日本はいましばらく、中国とは「手をうたない」ということである。
 つまり、今の状態を維持して中国の脅威を宣伝して、態勢を整えようとしている、ということである。
 なにしろ、2/3世紀ぶりに「普通の国」になれるチャンスを掴んだわけだから、安易に妥協してそれを失っては身も蓋もないというわけである。
 中国に恫喝スタイルを維持させて、いかにそれを有利に展開させる材料にするかが安倍さんの思惑であろう。
 安倍さんが朝霞基地で訓示したときが、そのスタート時点であるとみていい。
 まだまだ日本の強気は続く、とみていいだろう。
 フィリピンに中国の鼻面をかすめるように強力な艦船を送り込み、存在感を誇示するのはその証とみるのが正当だろう。
 アメリカ軍の原子力空母ジョージ・ワシントンの初動救助を引き継ぐ形で日本が出張っていくことになるが、日本の艦船がアジアの地で行動するのは久しぶりのことになり、周辺国はそれをどうみるかである。


「人民網日本語版」2013年11月20日
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2013-11/20/content_30646822.htm

 日本の学者:対中包囲網で中日のシーソーゲームが激化

 中国外交部(外務省)は18日
 「日中経済協会訪中団は中国国際貿易促進委員会の招待で訪中する。
 こうした訪問を通じて、日本経済界の中国に対する理解、中日関係に関する中国の立場と主張に対する理解を促したい」
と表明した。
 日本で発行されている中国語紙・中文導報は
 「日中関係のいくつかの分野が正常化しつつあるのかもしれない。
 特にビジネス協力、人的交流、非政府分野で対話が再開されている」
と指摘。
 「中日各界は『釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題を政治の檻に閉じこめる』べく努力している。
 様々な分野で悪影響を取り除く動きがすでに出ている」
と報じた。
 環球時報が伝えた。

 サウスチャイナ・モーニング・ポストは
 「日本ブランドの中国でのマイナスイメージが多少緩和され、日本企業の中国での売上を押し上げている」
と報じた。
 NHKは18日
 「中国指導者が隣国と親しくする方針を打ち出した後、釣魚島周辺海域への中国公船の進入回数は明らかに減少した。
 7月は4回、8月は6回、9月は5回だったが、10月は2回だけで、11月も現在までに2回だけだ。
 日中関係が好転しつつあることを示しているようだ」
と報じた。
 今回の日本財界の大型訪中団の訪中は、中日関係が緩和することを意味するものだろうか?
 韓国紙・文化日報は
 「釣魚島海域への中国海警局船舶の進入回数の減少という動きに日本はすでに注意を払い、対中関係の優先的発展を決定した。
 日本経済界の訪中は事実上、両国関係改善のシグナルを中国側に発するものだ」
と報じた。

 富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は18日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に
 「対中関係の発展は持続的な取り組みであり、日本ビジネス界はこの方面で常により先見性を備えている。
 過去何期もの自民党内閣は日中関係の修復を真に重視してこなかった。
 こうした状況は4年前までずっと続いた。
 一方、短い民主党政権期には、2国間の貿易関係が全くわかっていなかった。
 だが安倍政権発足後、状況はすでに多少変った」
と指摘した。

 日本の民間団体の訪中はどのような成果を上げられるのだろうか?
 劉江永氏は
 「結局は経済訪問団であり、釣魚島問題における安倍氏の立場に影響を与えることはない。
 日本の政策決定の仕組みには変化が生じており、政界や選挙に対する経済界の影響も以前とは異なる。
 この点をはっきり認識しなければならない」
と指摘した。
 日本経済大学のある教授は18日、環球時報の取材に
 「日中経済協会は3月にも20人前後の小規模な訪中団を派遣した。
 だが最近の民間団体の訪中は、期待した効果を上げていない。
 これは安倍政権の姿勢と関係がある。
 安倍首相は再登板後、1年足らずでASEAN10カ国を全て訪問した。
 これには政治、軍事的に中国を『封じ込める』以外に、経済外交のレベルの意味もある。
 日中関係悪化のため、多くの日本企業は中国での経営リスクを懸念している。
 安倍首相はすぐに立ち上がり、『中国プラス1』戦略を確立して東南アジア事業などを拡大するよう日本企業を誘導した。
 だがたとえリスクがあっても、日本企業はやはり中国市場を捨てきれず、東南アジアの投資環境も懸念している。
 このため安倍首相は自ら日本企業のための先遣隊役を務め、東南アジアなどの投資環境改善の支援を約束した。
 これは日本が中国と地域への影響力を争奪するうえでも、こうした国々への日本企業の投資を促進するうえでもプラスだ。
 日本経済界の訪中は、事実上安倍首相の政策指向と反するものであり、効果があるかどうかは楽観視できない
と指摘した。

 同教授はまた
 「東南アジアは様々な投資条件が整っておらず、たとえ日本が大々的に助力しても、一挙に達成することは不可能だ。
 安倍政権が日本企業に誤った発展の方向性を示したことは明らかだ
と指摘した。
 日本経済新聞は
 「安倍首相がASEANの経済成長を日本経済の軌道に組み入れ、対中包囲網を構築することは、日中のシーソーゲームの激化を招く
と指摘した。

 日本としてはシーソーゲームに持ち込みたいということだろう。
 そのゲームが続いているかぎり、日本は長い間できなかった普通の国への変身を行うことができる。
 もしゲームが円満解決してしまったら、日本は普通の国へ変わることができなくなってしまう。
 日本はぜひとも中国とこのゲームを続けていきたいということであろう。




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