2013年11月13日水曜日

中国共産党の3中全会、勝者は国有企業:改革計画は不動産バブル崩壊を加速させる

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●北京にある人民大会堂前で習近平国家主席と故・毛沢東主席の写真入りのお土産を売る露店商人(12日)


レコードチャイナ 配信日時:2013年11月13日 11時8分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79077&type=0

中国共産党の改革計画が不動産バブル崩壊を加速させる―中国


●12日、中国共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で明らかにされた改革計画が成功するほど不動産バブルが崩壊する時期が早まると指摘されている。資料写真。

 2013年11日12日、新京報によれば、中国国際金融有限公司が11日、中国共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で明らかにされた改革計画は、不動産バブル崩壊を加速させる可能性があるとの報告書を発表した。
 改革が成功するほど不動産バブルが崩壊する時期が早まるという。

 3中全会では今後5~10年にわたる経済改革の方向性が示された。
 中国国際金融有限公司は報告書で、改革案は財政システムや金融、土地、要素価格、政府権限の移管、収入の分配、戸籍など、社会管理制度の領域にまで及ぶ可能性があると指摘。 
 不動産や資産に関する税制改革において、格差是正が図られるとしている。

 中国国際金融有限公司の主席エコノミスト・彭文生(ポン・ウェンション)氏は、「改革」は
①.「市場の資源配分の増加による中長期的な供給能力の促進」、
②.「収入格差の縮小、消費率の引き上げ、貯蓄率の引き下げ」
③.「不動産バブル崩壊の加速」
の3つの影響をもたらすと指摘する。
 短期的には汚職抑制の推進と投資抑制の制度化に注目する必要があるとしている。

 中国国際金融有限公司は、この10年余りにおける不動産価格の急上昇は、地方政府の土地供給独占や税制のねじれ、金融投資の抑制などが背景にあることから、
 改革が不動産バブル崩壊を早めるとの見通しを示している。



ウォールストリートジャーナル     2013年 11月 14日 21:16 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304698204579197490386491188.html?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst

中国共産党の3中全会、勝者は国有企業

 中国の習近平国家主席と李克強首相による初の包括的な経済の青写真の中で示された、国有企業への支援的な文言は、指導部が企業の肥大化と非効率性に慎重に対応している様子を示唆している。
 国有企業は現時点ではその巨大な影響力を抑制されることを免れたもようだ。

 代わりに、
 党は変化を促す役割を市場勢力に委ねることを示したが、
 中国の最も強大な既得権益に直接挑むことを回避した。

 12日に閉幕した中央委員会第3回全体会議(3中全会)の声明は、民間セクターを支援し、改革を追求するとの内容だったが、具体的な目標を示さなかった。
 より詳細な経済再編計画は今後数日間で明らかになる見通しだ。

 持続的成長への明確な道筋を定めるという会議の使命にかかわらず、
 その閉幕声明は、国有企業の役割を再確認し、その「活力」を「絶え間なく強化する」と公約するものとなった。

 包括計画の策定にかかわったある中国政府高官は
 「目先は国有企業の根本的な改革を見込んでいない」
と述べたが、この見解は3中全会の声明を分析した外部エコノミストが共有するものだ。

 「国有企業の位置付けは変わっていない
と民生証券研究院の副院長、管清友氏は語った。

 13日の指標の上証総合指数(A株、B株を含む)は1.8%安、香港のハンセン指数は1.9%安とアジア株をアンダーパフォームし、投資家はあいまいな声明に失望感を表した。
 例外は上海上場の防衛・衛星関連株。
 この2つのセクターは声明で支援が示され、堅調に推移した。

 自由市場の位置付けを持ち上げる一方で国有企業の中心的役割を確認した指導部は、競争の余地を拡大することで、国有巨大企業の段階的な改革をはかるもようとなった。
 それは、彼らの政権初期に投じたような多大な政治的資本なしで実施されようとしている。

 状況を複雑にしているのが国有企業の多くの経営幹部と政権指導部との緊密な関係で、これは党の最上層部の中で強い結束力を持つサークルを構成している。
 財界と政府の要職間の回転ドアは、一部の指導者が国有企業との長きにわたる忠誠を携えつつ、国有企業を所管する政府職に就く場合もあることを意味する。

 北京の未公開株(PE)投資会社プリマベーラ・キャピタルのフレッド・フー会長は
 「国有企業改革は真の改革かを占う極めて重要な指標」
と述べた。
 同社は中国最大級の国有銀行の新規株式公開(IPO)にかかわった経緯がある。

 3中全会で論議された計画にかかわった政府高官や学識者によると、
 国有企業は変革を阻止することにあまりにも長(た)け、
 中国政府がその影響を段階的に軽減すべく、
 外国の支援を仰ぐという古くからの作戦に目を向けているという。
 この戦略の一環として、中国は米国や欧州連合(EU)と投資協定交渉を行うことに合意した。
 これは国有企業が圧倒するセクターなどこれまでは閉ざされていた業界に外部からの競争を導入することにつながる見込みだ。

 その見返りに、中国は国有企業の米国と欧州両市場へのアクセスも拡大するよう万全を期する構えで、そこで各社は競争力の強化を余儀なくされることになる。

 これは元首相の朱鎔基氏が追求した戦略に似たもの。
 朱氏は中国の世界貿易機関(WTO)への加盟交渉を利用し、非効率な国営企業を保護した補助金削減、関税引き下げなど国内での変化を促した。

 声明に盛り込まれた民間セクターの推進や自由市場の重大な役割の文言は、党が一部セクターを徐々に競争にさらしたり、国有企業によりよい資金調達と支援を行う方法を見つけたりする党側の期待があることを示している、と一部のアナリストは主張する。
 北京の市場調査会社ゲイブカル・ドラゴノミクスのマネジングディレクター、アーサー・クローバー氏は、競争促進は国有企業の効率性向上や民間企業への機会の提供につながると語った。
 そこにはこれまでよりも
 「早いペースで国有企業の立場が揺るがされることをよしとする意向
があるという。

 国有企業は全工業生産で26%ほど寄与している、と米首都ワシントンのピーターソン国際経済研究所の中国専門家、ニコラス・ラーディ氏は述べた。
 しかし、国有企業はエネルギー、運輸、銀行など経済の安定性に極めて重大とみなされるセクターで独占に近い状況を享受している。

 世界銀行によると、総じて国有企業は10万前後あるものの、その多くはより小さい企業だ。
 省や都市が保有し、民間会社と競争する小売会社やレストランなどである。

 国有企業は国有銀行から優遇措置を得ているほか、さまざまな補助、税優遇策を享受し、配当は競合各社を大幅に下回っているとの批判も聞かれる。

 最大級の国有企業にはさらに「暗黙の優位性」がある、と世界銀行と中国政府系シンクタンク、発展研究センターは昨年のリポートで述べた。
 「政策決定者との親密さ」がその理由だという。

 国有企業の影響力をもってしても、習氏の汚職摘発令から彼らは免れることはできていない。
 汚職取り締まりの目的の1つは政治的影響力を弱めることにあると指摘する党関係者もいる。
 国有企業もまた、政府高官による豪華な夕食や高級車の購入を自粛させる緊縮努力の対象の中に含まれた。

 これまで最大のターゲットは蒋潔敏氏となっている。
 蒋氏は今年、国有企業を管轄に置き、変化に反対する勢力とアナリストやエコノミストが広くみなしている国有資産監督管理委員会のトップに就任した。
 蒋氏はそれまで生産量で本土最大の石油会社、中国石油天然気集団(CNPC)の会長を務めていた。

 当局高官は9月、蒋氏が「深刻な規律違反」を理由に取り調べの対象になっていると述べた。
 こうした文言は中国高官の間では汚職事件について用いられる。
 その後、蒋氏とは連絡が取れなくなっている。



JB Press 2013.11.15(金)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39189

中国の失われた10年が再び始まった三中全会

 11月12日、三中全会(中共第十八届中央委员会第三次全体会议)が閉幕し、「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定(中共中央关于全面深化改革若干重大问题的决定)」が審議・採択された。

 今回はこの重要会議の決定を、筆者の独断と偏見に基づき、読者の皆さんと共に検証していきたい。

■盛り沢山の空虚な改革

 12日午後、新華社通信が三中全会の公报(コミュニケ)記事を配信している。
 分量的には全体で5100字程度だから決して長いものではない。
 生来怠け者ではあるが、せめて重要文書ぐらいは原語で読むと決めている筆者としては、今回も真面目にコミュニケ全文を読んでみた。

 「中国語はどうも」という向きには全文の日本語訳もあるので、適宜参照頂きたい。
 中国語にせよ、日本語にせよ、三中全会コミュニケの要旨は以下の通りである。
 ただし、日本語については、正確を期すため、人民網日本版関連記事を適宜参照させてもらった。

●【総体目標】
改革の全面的深化の総体目標は、中国の特色ある社会主義制度を整備し、発展させること。

【2020年までに、改革において決定的な成果を上げる】
2020年までに系統的で整備された、科学的で規範的な、効果的な運用が可能な制度体系を形成する。

●【独立的で公正な裁判権と検察権の行使を確保】
独立的で公正な裁判権と検察権の行使、司法権の実施メカニズムの整備、人権司法保障制度の充実。

【改革深化指導グループを設置】
中央は、全面的改革深化指導グループを設置し、改革の総体設計と統一調整などを担当させる。

●【経済体制改革は改革の全面的深化の重点】
核心は、政府と市場との関係を適切に処理し、資源配置における決定的作用を市場に果たさせること。

【国家安全委員会を設立】
国家安全委員会を設立し、国家安全体制と国家安全戦略を改善し、国家の安全を確保する。

●【共有制経済と非共有制経済】
共有制経済と非共有制経済はいずれも社会主義市場経済の重要な構成部分である。

■妥協の産物

 中国語能力の問題かもしれないが、筆者にとって中国共産党の公式文書を読むことは決して楽な作業ではない。
 理由は今も不明だが、とにかく中国共産党には、決定された政策の内容を分かりやすく外部に伝えようとする真摯な姿勢が決定的に欠けている。
 もちろん、今回のコミュニケも例外ではない。

 中でも極め付けは、改革の全面的深化について、「2020年までに決定的な成果を上げ、系統的で整備された、科学的で規範的な、効果的な運用が可能な制度体系を形成する」とある部分だ。
 形而上学的に退屈としか思えないこんな概念の羅列だけで、中国の今後の変化を推測できる人などいないだろう。

 そもそも、10年前の段階で中国の改革は全面的ではなかったのか。
 既に全面的なものをどうやって深化させるのか。
 改革が必要というなら、すぐにやればよいではないか。
 新しく指導グループを作ったり、成果を出すのに10年もかける必要などないはずだ。
 およそ本気で改革に取り組む気があるとは思えない。

 賢明な読者はもうお気付きの通り、今回のコミュニケには、全体を通じ、こうした曖昧な概念、表現、言い回しが繰り返し、繰り返し説かれている。
 しかし、よく考えてみたら、筆者も昔、似たような文書を読んだ経験があることを思い出した。

 それは1985年1月、イラクから帰国後初めて本省勤務した時代だった。
 毎年通常国会の冒頭では総理が所信表明演説を行う。
 当時総理が誰だったかはとっさに思い出せないが、その演説原案なるものがあらかじめ内閣官房に提出された関係省庁からの原案の寄せ集めに過ぎなかったことだけは鮮明に覚えている。

 今はもうこんな馬鹿なことはやっていないと思うが、当時は総理演説の一言一句を巡り関係省庁間で熾烈な協議が行われていた。
 各省庁の担当官が徹夜で交渉しても決着が付かないことなど日常茶飯事だった。
 若かった筆者も当然、役所間の縄張り争いに勝つことこそが公務員の仕事だと錯覚していた。

 日本と中国では事情が違う、との反論もあろう。
 しかし、今の中国は世界最大の官僚国家だ。
 もしかしたら昔の日本と同様、政治レベルの権力闘争が官僚レベルの文言争いと化しているのではないか。
 今回の決定は共産党内のいわゆる改革派、毛沢東主義者と既得権者の間の妥協の産物ではなかったのか。

 この疑問に答えるためにも、いくつか具体例を挙げてみよう。例えば、以下をお読み頂きたい。

●全体会議は、公有制を主体とし、様々な所有形態の経済が共同で発展するという基本的な経済制度は、中国の特色ある社会主義制度の重要な柱であり、社会主義市場経済体制の根幹でもあるとした。 
 公有制経済と非公有制経済はいずれも社会主義市場経済の重要な構成部分であり、中国の経済社会の発展の重要な土台である。(全会提出,公有制为主体、多种所有制经济共同发展的基本经济制度,是中国特色社会主义制度的重要支柱,也是社会主义市场经济体制的根基。公有制经济和非公有制经济都是社会主义市场经济的重要组成部分,都是我国经济社会发展的重要基础。)

 あれあれ?
 市場には「資源配置における決定的な役割を果たさせる」はずではなかったか。
 そうでれば、国有企業の役割は今後低下し、非公有制経済をより拡充していくべきではないのか。
 この文章を読むだけでも、関係者間で熾烈な権限バトルがあったことは容易に推測できる。さらに、次の文章も面白い。

●改革発展における安定的な関係の正しい処理を堅持し、度胸は広く、歩みはしっかりとし、トップダウンのプラニングと「石橋を叩いて渡る」の慎重さを結合させ、全体的推進と重点的突破とを互いに促進させ、改革政策決定の科学性を高め、共通認識を幅広く生み、改革の合力を形成する。(坚持正确处理改革发展稳定关系,胆子要大、步子要稳,加强顶层设计和摸着石头过河相结合,整体推进和重点突破相促进,提高改革决策科学性,广泛凝聚共识,形成改革合力。)

 外部の者には一体何を言いたいのかさっぱり分からないが、部内関係者には明瞭だ。
 要するに、「トップダウン」による大胆な改革実施もいいが、「石橋を叩いて渡る」ことも重要だとして、改革推進派と慎重派の喧嘩両成敗的解決を図った迷文なのだろう。
 中国共産党の党官僚の力量はかなりのものだ。

■「383」改革案

 国務院発展研究センターという組織がある。
 中国側報道によれば「中国政府上層部のブレーン機関」だそうだが、実態は中国共産党の経済実務専門家の集団といってよいだろう。
 報道によれば、同センターは三中全会に「383改革案」なる改革案についての報告書を提出したという。

 383改革案とは、「三位一体の改革構想、8つの重点改革分野、3つの関連改革」を含む中国の新たな改革のロードマップを指す。
 「三位一体」とは市場システムの整備、政府機能の転換、企業体制の革新であり、これで法治の保障された社会主義市場経済体制の構築を目指すのだそうだ。

 「8つの重点分野の改革」とは、行政管理体制、独占業種、土地制度、金融システム、財税制、国有資産管理体制、イノベーションシステム、および対外開放だという。
 「何だ、要するに全部じゃないか」などとツッコミたくなるところだが、ここはぐっと我慢しよう。

 この383改革案だが、よく読んでみると意外にまともである。改革を進めるためには、

(1).参入を拡大し、外部の投資家を引き入れ、競争を強化する
(2).社会保障体制改革を深化し、「国民基礎社会保障パッケージ」を設立する
(3).土地制度改革を深化し、集団所有地を市場で取引する

 などとしている。

 さらに、同報告書は2013-2014年の短期改革、2015-2017年の中期改革、2018-2020年の長期改革という3段階のタイムテーブルまで提唱している。
 経済に詳しい読者は既にご存知かもしれないが、内容的には、実務を知るエコノミストらしい、経済学的にも真っ当な多くの政策提言がまとめられている。

 例えば、廉潔年金制度の構築、公務員報酬システムの整備、石油製品価格の政府管理廃止、通信企業の再々編、土地譲渡収入の追徴、預金保険制度の設立、人民元の国際決済通貨化、各層の基本養老保険の一本化、国家のバランスシートの作成、大学の脱行政化、基幹産業の対外開放などなど。

 なかなかしっかりした政策提言ではある。
 だが、三中全会のコミュニケには383改革案なる文言はもちろん、ここに挙げた具体的な改革案などほとんど言及されていない。
 経済原理に基づくエコノミストたちのまともな提言も各種既得権にとっては脅威であり、政治的には受け入れ不可能なのだろうか。

 この383改革案と三中全会のコミュニケの間のギャップこそ、中国で本格的改革がいかに難しいかを示しているのだろう。

 どうやら今回の三中全会では、
 現行経済システムの基本を変えない前提で、
 10年後を目処に、利害関係者のそれぞれの立場を十分尊重しつつ、改革を行うことを決めた
に過ぎないようだ。
 要するに、中国の「失われた10年」が繰り返される可能性が高い、ということなのだろう。

■「国家安全委員会」はNSCなのか

 最後に、国家安全委員会の設置について一言だけ申し上げたい。
 一部では中国が「日本のNSC設置を意識して、中国版NSCを発足させる」などと報じられているようだが、筆者にはどうしてもピンとこない。
 今回のコミュニケの中で「国家安全委員会」に触れた部分は次ぎの通りだ。

●全体会議は、社会の管理を革新するためには、最も幅広い人民の根本利益を保護することに着眼し、調和的な因子を最大限増加させ、社会発展の活力を高め、社会管理の水準を引き上げ、国家の安全を維持し、人民の就業と生活の安心、社会の安定と秩序を確保しなければならないとした。(全会提出,创新社会治理,必须着眼于维护最广大人民根本利益,最大限度增加和谐因素,增强社会发展活力,提高社会治理水平,维护国家安全,确保人民安居乐业、社会安定有序。)

●社会の管理方式を改良し、社会組織の活力を引き出し、社会矛盾を効果的に予防し解消する体制を革新し、公共安全体系を整備する必要がある。(要改进社会治理方式,激发社会组织活力,创新有效预防和化解社会矛盾体制,健全公共安全体系。)

●国家安全委員会を設立し、国家の安全体制と国家の安全戦略をさらに完全なものとし、国家の安全を確保しなければならない。(设立国家安全委员会,完善国家安全体制和国家安全战略,确保国家安全。)

 これはどう読んでも、外交・国防政策の司令塔としてのNSCと言うよりは、内政・治安・社会政策の司令塔を念頭に置いた書きぶりではないだろうか。
 もしかしたら、最近の天安門前の車両炎上事件や山西省での爆弾事件の発生は中国の治安、諜報、軍各組織間の連携不足を暗示しているのかもしれない。

 そうであれば、今の中国に内政・治安志向の強い「国家安全委員会」ができても不思議はない。
 同委員会に外交・国防政策の調整機能を組み込んでいく可能性も否定できないが、
 今の中国には、外交・防衛よりも、内政・治安の方が重要だろう。
 国家安全委員会とはそのような背景で新設されるのだと思う。

宮家 邦彦 Kunihiko Miyake
1953年、神奈川県生まれ。東大法卒。在学中に中国語を学び、77年台湾師範大学語学留学。78年外務省入省。日米安全保障条約課長、中東アフリカ局参事官などを経て2005年退官。在北京大使館公使時代に広報文化を約3年半担当。現在、立命館大学客員教授、AOI外交政策研究所代表。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。


レコードチャイナ 配信日時:2013年11月16日 7時50分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79206&type=0

中国「三中全会」を解読!
―習近平政権の両輪、中央全面深化改革領導小組と国家安全委員会


●12日、中国共産党第18期第三次中央委員会全体会議(三中全会)が閉幕し、同日夕方、公報(コミュニケ)が発表された。注目されるのは二つの組織の新設が決議されたことだ。写真は「チャイナ7」のヒエラルキー図。

 2013年11月12日、中国共産党第18期第三次中央委員会全体会議(三中全会)が閉幕し、同日夕方、公報(コミュニケ)が発表された。
 これはあくまでも中共中央書記処がまとめた概略なので、何のことだかわからない。
 ただ非常に明確なのは二つの組織の新設が決議されたことだ。

①.一つは中共中央の下に設置される「全面深化改革領導小組」で、
②.もう一つは「国家安全委員会」である。
 その具体的な内容がいかなるものであるかに関しては閉幕後、1週間前後経ってから発表する。
 まもなく発表されるのは、二つの組織機構の内容に関する「決定」で、これを待たないと、三中全会で具体的に何が決まったのかを知ることはできない。

 そこで今回は先ず、設立が決議された二つの組織の位置づけに関してのみ解説したい。

◆中央全面深化改革領導小組とは何か?

 図に示したように、中国共産党の指導体制は「中国共産党大会(5年に一回開催)→中共中央委員会(党大会前後以外は1年に一回開催)→中共中央政治局(開催頻度は高い)→中共中央政治局常務委員会(必要時に常に開く)」という体制になっている。

 図のトップの小さな黒い三角形で示したのが「中共中央政治局常務委員会委員7名」で筆者はこれを「チャイナ・セブン」と名付け、ここでは「C7」と略記している。

 この「C7」が集団指導体制で決めた議決内容が中国という国家を動かしているが、いうまでもなく、「7名」は決して何でも分かるわけではない。
 そこで各テーマに関してワーキング・グループがあり、それを中国では「領導小組」あるいは「委員会」と称する。
 いずれも、いくつもの部署にまたがっている組織だ。

 たとえば外交関係なら「中央外事工作領導小組」というのがある。
 組長は習近平国家主席で、副組長は李源潮国家副主席。
 含まれる部署は中央行政省庁の外交部、国防部、公安部、安全部、商務部、香港澳門弁公室、僑務弁公室、国務院新聞弁公室、中宣部(中共中央宣伝部)、中聯部(中共中央対外連絡部)、中国人民解放軍総参謀部などである。 
 大所帯だ。

 こういった中共中央系列の「領導小組」や「委員会」という組織が40近くあり、チャイナ・セブンを支えている。

 ここに新たに「中央全面深化改革領導小組」を設立することが三中全会で決まった。
 扱う分野は「政治、経済、社会、文化、生態(エコ、環境の意味)」の5つの分野で、これを「五位一体」と称している。

 これまでは図の左下の方にある国務院(中国人民政府)に付随している「国家発展改革委員会」が改革開放の推進に関する調整機構だった。
 図でも明らかな通り、中国では「党」が「政府」の上に立っている。

 今般設立した「中央全面深化改革領導小組」は、政府(国務院)の付設機構ではなくて、中共中央の付設機構だ。
 つまり「改革開放の深化」を「政府」から「党」に格上げしたということである。

 それは逆に言えば、
 社会主義国家の中で市場経済を中心として発展させてきた改革開放に基づく経済発展に「限界が来た!」
ことを意味する。

 経済の量的成長を抑えて質的成長へと転換し、同時に社会の不満を招かないよう、そして環境を汚染しないように、
 多方面にわたったマクロなコントロールを党自身がやっていくしかないようになった、
ということなのである。

◆車の両輪をなす「国家安全委員会」の設置

 しかし一党支配をやめない限り、どんなにマクロコントロールを党のレベルまで引き上げたところで、根本問題は解決しないと筆者は思っている。
 いや、中共中央も、そのことを自覚しているだろう。。

 そこで三中全会では「国家安全委員会」を新設することを決議した。
 これには「国家」という枕詞があるのでこれは国務院(政府)側に設けた組織であることを意味する。

 中共中央同様、国務院にも80個ほどの「領導小組」と「委員会」がある。
 「委員会」というのは、いくつかの中央行政省庁にまたがって構築される組織のことだ。
 このたびの「国家安全委員会」は「国家公安部、中国人民武装警察部隊(武警)、国家安全部(スパイなどを偵察)、中国人民解放軍総参謀部第二部(総参・情報部)と第三部(総参・技術偵察部)、中国人民解放軍総政治部の聯絡部、国家外交部、中共中央対外宣伝弁公室(外宣弁)」などによって構成されており、これもまた大所帯。

 なぜここまでの大掛かりなものを設立するかというと、年間20万件にも及ぶ抗議運動に対して対処しきれないからだ。
 それならなぜここまで暴動件数が多いかというと、それは中国共産党が一党支配をやめないからである。

 「中央全面深化改革領導小組」を設立し、「人民の側に立った全面的な改革」を行うとしながら一党支配を堅持すれば、根本的問題は解決せず、抗議の数は増えていくだろう。

 ならば、それを「締め付けよう」というのが、この「国家安全委員会」なのである。
 すなわち習近平政権は今後、「中央全面深化改革領導小組」と「国家安全委員会」を「車の両輪」として国家運営をしていくということだ。
 これが「三中全会」のコミュニケから見えてきた習近平政権の「車の両輪」である。

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』など多数。



サーチナニュース 2013/11/30(土) 09:33
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1130&f=national_1130_002.shtml

【中国ブログ】習政権も結局「ウソ政権」、ウソつき大国中国

  中国共産党は11月9日より12日、18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)を開いた。
 会議では昨年発足した習近平体制による施政方針が示され、改革に本腰を入れる姿勢が中国メディアによって賞賛された。

  しかし、中国国内のブログを覗いてみると、三中全会の決定内容に対して正面から批判するような書き込みも散見された。
 ブログサイト・博客中国のアカウント名「最壊的好人」さんは、
 冗長かつ新しい情報のない三中全会コミュニケは「言葉の腐敗」の産物であり、「言葉の腐敗」は典型的な中国の特色だと主張した。

  最壊的好人の言う「言葉の腐敗」とは、「ウソ」を並べることだ。
 主張によると、1950年代後半の大躍進政策が「ウソ」のピークだったが、改革開放から30年が経過した現在再び「ウソ」の最盛期を迎えたという。
 政治のガンたる「ウソ」は毛沢東、トウ小平から江沢民、胡錦濤へと受け継がれ、拡散され、習近平氏も党の風紀を変えると意気込みながらも結局は「ウソ」から離れたら何も文章が書けなかったとした。

  最壊的好人さんは今の中国を「人が人をだまし合う、『全民ウソつき時代』」とさえ評した。
 もちろん中国には正直な人もたくさんいるはずだ。
 そのような評価を下したくなる背景には、改善されない社会問題や、後を絶たない統計数値のインチキなどがあるのだろう。

  信頼され愛される者が発する大げさな言葉は、しばしば人に勇気や熱意を湧き立たせる。
 しかし、信頼のない者が広げる大風呂敷に対しては、厳しい軽蔑の目が浴びせかけられることになる。
 党や政府の発言は今、どちら側に位置しているのだろうか。






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