2013年9月28日土曜日

中国国有企業は汚職の温床:全産業に拡大の様相:汚職との戦いはいかに

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ロイター 2013年 09月 27日 17:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98Q06L20130927

焦点:中国の国有企業は汚職の温床、全産業に拡大の様相も

[香港 27日 ロイター] -
 中国石油化工は昨年3月、福建省で9億ドルの製油所拡張工事の着工許可が降りた直後、プロジェクト担当チームに賄賂の受け取りを禁止する警告を出した。

 警告文書を見た関係者がロイターに明らかにしたところによると、シノペックの福建省部門は
 「最も汚職が多いのは設計と建設部門だ。
 全社員、とりわけ幹部は立場をわきまえ、用心深く、誘惑に耐えなければならない
と戒めた。

 この文書が浮き彫りにしたのは、習近平国家主席が直面する最大の課題の一つと専門家が指摘する「汚職との闘い」、すなわち国有企業が実施する設計、調達、建設契約における汚職への取り組みだ。

 国有企業での汚職は以前から周知の事実だったが、政府当局はこのほど国有エネルギー大手、中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)とその親会社の中国石油天然ガス集団(CNPC)の元幹部5人の捜査に乗り出し、エネルギー業界を驚がくさせたことが新聞の見出しを飾った。

 今回の捜査を受け、国有企業の中で最も強力な地位を占めるエネルギー業界の汚職撲滅に向け、習主席がどこまで踏み込むかを疑問視する声が出ている。

 国有企業の幹部は、ほとんど権限の監視を受けない中国共産党員が大半を占める。
 しかも交渉の場で動く金額は巨大だ

 欧州連合(EU)の在中国商工会議所によると、
 中国の国有企業が2011年に実施した
 「財、サービスの入札は総額9兆2600億元(1兆5100億ドル)
にも上る。
 この中で設計、物資の調達、建設(英語の頭文字を取ってEPCと呼ばれる)の金額がどの程度に上るかは不明だ。
 EPCに関する汚職捜査の金額はもちろん明らかになっていない。

 ただ、業界のデータによると、中国の石油化学関連の設計市場は2016年には400億ドルに達する見通し。
 中国では石油精製能力の拡張のために12─16年に650─800億ドルを投資する計画だ。

 国有企業の入札を巡る汚職に関し、中国海洋石油(CNOOC)の親会社、中国海洋石油総公司(CNOOCグループ)のエネルギー調査部門の責任者を務めるChen Weidong氏は
 「上層部に権限が集中しているため、汚職の問題は避けられない。
 彼らが公共入札プロジェクトを掌握する一方で、業者の選定過程は外から見えない」
と問題点を指摘する。

■<元鉄道相の汚職>

 中国政府は公共調達入札での汚職取り締まりを強化してきた。
 2000年代初めには契約額が200万元以上の公共工事や、100万元を上回る物品調達の際に、入札を義務付ける法律を制定した。

 調達システムの電子化による透明性の向上も図られてきたが、その方式が常時実施されるわけではない。
 全ての地方政府や政府機関にシステムが導入されておらず、全国統一の公共調達プログラムがまだ完成していないためだ。

 業界幹部とアナリストは、汚職がまん延する背景として中国の急速な経済成長を指摘する。
 急成長に伴って政府の固定資産投資が短期間に拡大し、国有企業は受けるべき監視の目を逃れているという。

 入札に関与する国有企業の幹部は、落札業者の選定や親族や友人が経営する企業を優遇する見返りに、賄賂を受け取る。
 大規模プロジェクトを複数の事業に分割し、入札手続きを回避する手法で不正を行う場合もある。
 最近では、1986年から2011年にわたり、11人に対して入札や昇進の便宜を図った見返りに6460万元の賄賂を受け取ったとして、収賄や職権乱用の罪に問われた劉志軍・元鉄道相が執行猶予2年付きの死刑判決を受けたケースがある。

 汚職取り締まりを行う共産党中央規律検査委員会(CCDI)は先週、公共調達や国有地の売買など公共財の取り引きを全面的に見直す方針を打ち出した。

 ウェブサイト上では、昨年11月に習主席が就任の際に打ち出した腐敗撲滅運動が記述されているものの、全面的見直しの詳細や背景は明らかにされていない。

■<シノペックからペトロチャイナへ>

 シノペックは、2009年に陳同海会長(当時)が3200万ドルの賄賂を受けたとして執行猶予付き死刑判決を受けた後、汚職対策を強化することを公約した。
 事件は2012年のメモの一部がウェブサイトに掲載されて、比較的に内容が明らかになっている。
 メモには
 「シノペックの汚職事例の件数はプロジェクトの入札、契約、下請け、調達の分野で特に増加している」
と記されている。

 65億ドル規模の石油精製設備の拡張は製油所のほか、サウジアラムコや米エクソンモービル)と共同運営する石油化学コンビナートで工事が行われており、年内に完成する予定だ。
 現時点で汚職に関する報道は出ていない。

 今年8月後半から9月初めにかけては、ペトロチャイナの元幹部数人が、汚職を意味する「重大な規律違反」で当局の捜査を受けており、今後の焦点となりそうだ。

 厦門大学(福建省)の中国エネルギー経済研究所の所長で、中国原子力産業協会(CNEA)のアドバイザーも務める林波強氏は
 「公共調達の汚職はエネルギー業界だけでなく、全産業に及んでいる。
 エネルギー業界は事業規模が巨大なために注目を集めやすい
と指摘した。

■<中国の公共調達制度を批判するEU>

 EUは中国の不透明な公共調達制度を批判しており、外国企業に市場開放するよう求めている。
 EUは2013/14年の政策方針で「(中国の)入札手続きはまだ完全に電子化されておらず、入札者に対する情報共有の最適化や透明性が確保されていない」と指摘した。

 中国財務省はこうした懸念に対応し、全国統一の政府調達システムの開発を進め、データベースを共有してオンラインで入札査定や支払いを可能にする方針だ。

 もっとも、政策決定プロセスの透明性がない状況では、公正なシステムはすぐには整備されないと、エネルギー業界の関係者はみている。

 ある石油企業の幹部は
 「入札手続きの中には密室で行われるものもある。
 規則や規制の問題ではなく、やる気があるかどうかだ」
と話している。

(Charlie Zhu記者)




【トラブルメーカーから友なき怪獣へ】


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