●図1 リーマン・ショック以降の中国における景気の諸局面 -経済成長率とインフレ率の推移-
(注):①は低成長・低インフレ、②は高成長・低インフレ、③は高成長・高インフレ、④は低成長・高インフレ
(出所)CEICデータベースより作成
『
サーチナニュース 2013/09/13(金) 11:01
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0913&f=business_0913_036.shtml
高度成長期の終焉を迎える中国経済の課題=関志雄
―リコノミクスで難局を乗り越えられるか―
中国経済新論「実事求是」
中国では、1978年に改革開放に転換してから2012年まで、年平均9.8%という高成長を遂げていたが、ここに来て、成長率が急速に低下してきており、高度成長期が終焉を迎えている。
今年の第2四半期には、経済成長率は7.5%、インフレ率は2.4%にとどまっている。
リーマン・ショック以降(2008年第4四半期~2013年第2四半期)の平均値(成長率が8.9%、インフレ率が2.6%)を基準にすれば、中国経済は2012年第3四半期以降、「低成長・低インフレ」という後退期に入っている(図1)。
リーマン・ショックを受けた前回の後退期において、政府は大幅な金融緩和とともに4兆元(2008年のGDPの12.7%に相当)に上る大規模な景気対策を行い、これらが功を奏する形で、2009年の後半にかけて中国経済は急回復した。
しかし、今回は、成長の鈍化を受けて、大型景気対策の実施を求める声が高まっていたにもかかわらず、政府は積極的にそれに応じようとしなかった。
特に、この春に就任した李克強首相は、
短期の景気対策よりも中長期の構造改革を優先させるというスタンスを明確に打ち出している。
その背景には、
①.潜在成長率が大幅に低下していることに加え、
②.前回の景気対策の負の遺産として、住宅バブルが膨脹するなど、マクロ経済を不安定化させるリスクが懸念されるようになったこと
がある。
潜在成長率が低下しているにもかかわらず、それを上回る高成長を拡張的財政・金融政策によって達成しようとすれば、これらのリスクが顕在化する可能性がさらに高くなる。
これは、中国が日本の1980年代後半のバブル期の経験から学ぶべき教訓でもある。
■低下する潜在成長率
中国では、1980年に導入された一人っ子政策のツケが回ってくるという形で、生産年齢人口(15歳~59歳)は昨年初めて減少に転じ、その一方で高齢化も加速している。
また、これまで農村部が抱えていた余剰労働力も、急速な工業化と都市化によってほぼ解消され、
発展の過程における完全雇用の達成を意味する「ルイス転換点」はすでに到来している
と見られる。
生産年齢人口の減少とルイス転換点の到来を受けて、中国の潜在成長率の低下は避けられない。
まず、生産年齢人口が減少し始めることは、人口ボーナスが人口オーナス、つまり重荷に変わることを意味する。
これまで、生産年齢人口が増え続けてきただけでなく、若い人が中心の社会においては貯蓄率も高かった。
生産年齢人口の増加は、労働供給量の拡大をもたらし、また、貯蓄が投資の資金源になるため、高貯蓄率は資本投入量の拡大につながったのである。
これに対して、生産年齢人口の減少と高齢化の進行は、労働供給量の減少と貯蓄率の低下を通じて、成長率を抑えるのである。
また、ルイス転換点の到来も成長の制約となる。
これまで無限と言われた労働力の供給は、次のルートを通じて、中国の経済成長を支えてきた。
①.まず、農業部門における余剰労働力が工業部門とサービス部門に吸収されることは、直接GDPの拡大に貢献している。
②.また、生産性の低い農業部門から生産性の高い工業とサービス部門への労働力の移動は、経済全体の生産性の上昇をもたらしている。
③.さらに、余剰労働力により賃金が低水準に維持されることは、所得分配の面において、資本収入の多い高所得層に有利に働き、ひいては高貯蓄と高投資につながっている。
④.しかし、完全雇用の達成は、これらの優位性が失われることを意味し、潜在成長率は低下せざるを得ない。
一般的に、生産年齢人口が増加から減少へと転換する時期と、不完全雇用から完全雇用へと転換する時期は異なる。
たとえば、日本の場合、完全雇用を達成したのは1960年代の初めと見られる(南亮進『日本経済の転換点 : 労働の過剰から不足へ』、創文社、1970年)が、
生産年齢人口が減り始めたのは1995年前後であった(国際連合、World Population Prospects, The 2012 Revision)。
これに対して、中国の場合、この二つの転換点が偶然にもほぼ同時に到来したため、
労働力不足の度合いとそれに伴う経済へのインパクトは、他の国と比べて大きいと思われる。
労働市場におけるこのような変化を背景に、近年、成長率が従来と比べて大幅に低下しているにもかかわらず、都市部の求人倍率は上昇傾向をたどっており、今年の第1四半期の1.10倍に続き、第2四半期も1.07倍という高水準に達している(図2)。
●図2 成長率が低下しても高水準を維持する都市部の求人倍率
-ルイス転換点の到来と潜在成長率の低下を示唆-
(注)中国の都市部の求人倍率は、約100都市の公共就業サービス機構に登録されている求人数/求職者数によって計算される。
(出所)中国国家統計局、人力資源・社会保障部より作成
これは、2009年の初めに、成長率の低下とともに求人倍率も急落したことと対照的である。
企業の求人数が労働者の求職数を上回っているという状況から判断して、中国の現在の潜在成長率はすでに実際の成長率である7.5%を下回っていると見られる。
■忍び寄る経済危機の影
潜在成長率の低下とともに、シャドーバンキングによる融資の拡大や、住宅バブルの膨脹、地方政府が設立した融資プラットフォーム会社の債務の増加など、マクロ経済の不安定化も懸念され始めている(図3)。
●図3 懸念される「中国リスク」の構図
(注)→は資金の流れ
(出所)筆者作成
まず、中国におけるシャドーバンキングとは、正規の銀行システムの外で、流動性と信用変換機能を持っている、システミック・リスクや規制回避を引き起こす可能性のある機関や業務によって構成された信用仲介システムである。
銀行が販売する「理財商品」と信託会社が販売する「信託商品」がそのコアとなる。
両者を合わせた規模は、2013年3月末には、16.9兆元に達していると推計され(中国銀行業監督管理委員会、中国信託業協会)、これはGDPの36%に相当する。
シャドーバンキングは、金融イノベーションを通じて監督管理の規制を回避する手段である。
当局は金利規制と高めの預金準備率(現在、大手銀行の場合20.0%)を設けており、また預貸比率(75%)と窓口規制などを通じて銀行の貸出を制限している。
市場競争が激しさを増す中で、銀行は規制を回避するために、従来の貸出に代わる融資の手法として、シャドーバンキングを活用するようになったのである。
しかし、シャドーバンキングが効果的な監督管理下に置かれなければ、リスクは高まる恐れがある。
特に、急拡大しているシャドーバンキングを通じた融資は、直接的に、または融資プラットフォーム会社を経由して、不動産市場に流れており、住宅価格の高騰に拍車をかけている。
次に、リーマン・ショック以降の金融緩和を受けて、不動産市場は、主要都市の住宅販売価格が急騰するなど、バブルの様相を呈した。
これに対して、2010年以降、中国政府は一連の対策を発表・実施した。需要抑制策としては融資規制、購入制限、不動産関連税制の強化、供給拡大策としては保障性住宅の建設の加速がその主な内容となっている。
これを受けて、70大中都市の新築商品住宅販売価格の前年同月比上昇率は、2012年3月から10ヵ月連続してマイナスで推移していた。
しかし、その後の金融緩和を受けて、2013年1月から再び上昇に転じた。
2013年7月には、70大中都市の新築商品住宅販売価格は前年同月比7.1%上昇しており、中でも、北京は同18.3%、上海は同16.5%など、大都市では上昇幅が大きくなっている(図4)。
住宅バブルが一層膨張すれば、それが崩壊する時に銀行部門やマクロ経済が大きな打撃を受けることも懸念されている。
●図4 新築住宅販売価格の推移図4 新築住宅販売価格の推移
(注)2010年12月までは新築住宅販売価格指数。2011年1月からは新築商品住宅販売価格指数、70大中都市は各都市の単純平均。
(出所)CEICデータベースより作成
そして、シャドーバンキングと住宅バブルの膨張に加え、地方政府債務、中でも融資プラットフォーム会社が抱えている債務も、マクロ経済を不安定化させる要因として問題視されている。
ここでいう融資プラットフォーム会社とは、地方政府およびその機関が、財政資金や土地、株式などを出資して設立した、政府の投資プロジェクトの資金調達機能を担う、独立した法人格を持つ経済主体のことである。
現在の財政制度の下では、地方政府は、恒常的に財源の不足に悩まされている上、自ら債券を発行することが禁止されている。
このような制約の下で、インフラ投資の資金を調達するために、各地の地方政府は、多くの融資プラットフォーム会社を設立したのである。
特に、2008年9月のリーマン・ショックを受けて実施された4兆元の景気刺激策の財源を賄うために、政府は、融資プラットフォーム会社による資金調達を容認するようになった。
金融緩和の実施も加わり、全国の融資プラットフォーム会社の数と債務は急増した。
従来の銀行融資に加え、シャドーバンキングも融資プラットフォーム会社に多くの資金を提供している。
審計署(日本の会計検査院に当たる)によると、
2010年末における全国の地方政府債務残高は10.72兆元(GDPの26.7%)に上り、
その約6割は2008年以降に形成されたものである。
借入の主体別でみると、融資プラットフォーム会社は4.97兆元(債務残高の46.4%)と、地方政府部門・機関の2.50兆元(同23.3%)を上回っている(審計結果公告2011年第35号「全国地方政府性債務審査結果」、2011年6月27日)。
それ以降、同統計が当局によってアップデートされていないが、2013年4月のボアオ・アジア・フォーラムでの項懐誠・元財政部長の発言によれば、2012年末の地方政府債務はすでに20兆元を超えた可能性がある。
経済が低迷している中で、融資プラットフォーム会社の債務を中心に、不履行のリスクに対する懸念が高まっている。
■処方箋としてのリコノミクス
潜在成長率が大幅に低下し、経済危機のリスクが高まっているという難局を打開するために、李克強首相は、
①.「安定成長の維持」、
②.「構造調整」、
③.「改革の推進」
という三本の柱からなる経済政策(いわゆる「リコノミクス」)を進めている。
李首相が指摘しているように
「成長を安定させることで構造調整のための有効な余地と条件をもたらすことができ、構造調整によって経済発展の持続力をもたらすことができ、両者は互いに補い合っている。
改革を通じ、体制・仕組みの障害を排除することで、安定成長と構造調整に新たな原動力を注入できる。」(広西で開催された一部の省・自治区の経済情勢に関する座談会での発言、2013年7月9日)。
1)..安定成長の維持
安定成長の維持については、李克強首相は、マクロ・コントロールの主要目的が、経済の大きな上下変動を回避することにより、経済成長率を一定の水準以上に、またインフレ率を一定の水準以下に維持することであると指摘している。
具体的数値は示されていないが、今年春に全国人民代表大会で発表された7.5%と言う成長率と、3.5%というインフレ率の目標が参考になろう。
また、金融改革と財政改革を通じて、資金の利用効率を高め、経済危機を未然に防がなければならない。
中でも、シャドーバンキングによる融資と地方政府債務の膨脹や、住宅価格の上昇を抑えることは急務となっている。
2)..構造調整
構造調整については、「経済発展パターンの転換」が最優先課題となる。
具体的に、
①.需要の面では「投資から消費」へ、
②.産業の面では「工業からサービス業」へ、
③.生産様式の面では企業のイノベーション能力の向上や産業の高度化などを通じて
「労働力や資本といった生産要素の投入量の拡大から生産性の上昇」
へとシフトしていくことが求められている。
構造調整を促すために、2013年6月19日に行われた国務院常務会議において、金融支援策が決定された。
中でも、次の4項目が重要だと思われる。
(1).融資資金が実体経済を支えるよう導く。
そのために、先進的製造業、戦略的新興産業、労働集約型産業とサービス業、伝統的産業の改造・高度化などに対する融資の面における支援を強化する。
(2).過剰生産能力の調整を支援し、生産能力過剰企業の統合に対し、合併・買収(M&A)向けの融資を行い、生産能力過剰業種の規定違反の建設事業に対する新規与信拡大を厳禁する。
(3).これまで正式な金融機関からの融資をほとんど受けられず、インフォーマル金融に頼らざるを得なかった農業と零細企業に対する融資を強化する。
(4).民間資本が金融機関の再編に参加することを奨励し、民間資本による銀行とファイナンスリース会社、消費者金融会社などの設立を模索する。
3)..改革の推進
改革の推進については、政府と市場の役割分担の見直しが焦点となる。
市場と民間企業の活力を活かすために、規制緩和や多くの分野における国有企業の独占体制の打破を通じて、公平・公正な市場環境を構築しなければならない。
その一方で、国民生活と直結する環境保護や、社会保障、医療、教育といった公共サービスの分野における政府の役割を強化しなければならない。
その一環として、2013年5月6日に開催された国務院常務会議において、今年度の経済体制改革深化の重点的取り組みが決定されたが、その中で、次の5項目に注目したい。
(1).投資プロジェクト許認可権限、生産経営活動許可権限などの見直し、撤廃、委譲を急ピッチで進める。
(2).予算制度改革深化の全体計画をまとめ、地方政府の債務リスクをコントロールする措置を整備する。
(3).金利・為替の市場化改革措置を徐々に実施し、人民元資本取引の自由化の実施計画を提出する。
(4).鉄道投融資体制改革計画をまとめ、鉄道の所有権と経営権を民間資本に開放し、既存の幹線鉄道への民間資本の投資を誘導する。
(5).人間本位の新型の都市化に向けて、戸籍制度改革を推進し、関連する公共サービスおよび社会保障制度を整備する(注)。農民の合法的権益を保護する。
李克強首相の下で、これらの政策を体系化した、リコノミクスの決定版ともいうべき経済改革案がまとめられている。
その内容は、今年11月に開催される中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)において明らかになるだろう。
これを中国経済の行方を占うための重要な材料として注目したい。
(注)李克強首相は、都市化を「経済発展パターンの転換」を促す重要な原動力としてとらえている。都市化の推進に当たり、従来の不動産やインフラ投資に代わって、戸籍改革などを通じた出稼ぎ農民とその家族の定住が強調されるようになった。
(執筆者:関志雄 経済産業研究所 コンサルティングフェロー、野村資本市場研究所 シニアフェロー 編集担当:水野陽子)
(出典:独立行政法人経済産業研究所「中国経済新論」)
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2013年9月15日 11時7分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=76759&type=0
<数字で見る中国>
北京市の不動産開発投資額、8カ月間で3兆2000億円超=前年比5.8%増―統計局
●12日、中国・北京市統計局、国家統計局北京調査総隊が発表したデータによると、今年1~8月までの北京市の不動産開発投資額は1985億6000万元(約3兆2085億円)で、前年比5.8%増加した。写真は北京市にあるマンション。
2013年9月12日、中国・北京市統計局、国家統計局北京調査総隊が発表したデータによると、今年1~8月までの北京市の不動産開発投資額は1985億6000万元(約3兆2085億円)で、前年比5.8%増加した。
北京晩報が伝えた。
うち、住宅に対する投資は920億3000万元(約1兆4871億円)で、前年比5.9%減少。
分譲住宅の施工面積は1億2261万6000平方メートルで、前年比4.4%増えた。
さらに、新たに着工した分譲住宅の面積は2089万2000平方メートルで、前年同期比6.4%増加した。
低所得層向け住宅への投資額は370億4000万元(約5985億円)で、前年比26.6%減っている。
このほか、全市の分譲住宅販売面積は1156万1000平方メートルで前年比18.5%増だった。
』
「弾けるのは何時?」
時間の問題になりつつあるのが都市部の不動産開発である。
このまま続くと2015年には日本が被ったよりも大きな被害が出そうな予感がする。
『
レコードチャイナ 配信日時:2013年10月16日 10時7分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77840&type=0
転換点にさしかかった中国の人材供給―中国紙
2013年10月11日、北京晨報によると、社会科学文献出版社による「人的資源青書:中国人的資源発展報告(2013)」が10日、発表された。
中国は生産年齢人口の割合が低下し、マイナス成長に転じるという歴史的な転換点を迎えた。
中国の労働力供給は、全体量の面から見ればまだかなり充足しているが、年齢別構成比ではある程度の変化が見られる。
国家統計局の統計データによると、低い出生率と高齢化の加速が続いていることから、15歳から64歳の生産年齢人口が占める割合は2002年以降下落傾向にある。
2012年時点における15歳から59歳の生産年齢人口は9億3727万人で、2011年比345万人減、総人口に占める割合は69.2%と、2011年末比0.6ポイント低下した。
生産年齢人口の絶対数が減少したのは、長い歴史の中で2012年が初めてとなった。
また、中国では労働参加率も年々低下傾向にあり、2005年の76.0%から2011年には70.8%まで低下した。
労働力の供給構造に変化が現れ始めた。このほか、就業圧力は依然大きく、就業難状態が続いている。
今後当面の間、就業需要がある都市・町の労働力は年間2400万人を上回るが、就業ポストは1200万前後しかないのが現状だ。
「十二五(第12次五カ年計画:2011-2015年)」期間の卒業生は年平均700万人前後に達する見込み。
農村部には1億人以上の余剰労働力があり、年間800万人から900万人の労働力移転が必要となっている。
また、2億人以上の出稼ぎ労働者のうち、不安定な雇用形態の人が多勢を占めている。
就業の安定性は就業の質を評価する上での重要指標となっている。
グローバル人材コンサルティング会社エーオンヒューイットの調査によると、中国における平均労働移動率は15.9%と、世界でも高いレベルにある。
出稼ぎ労働者の就業形態が「臨時雇用」の傾向を呈しており、それは雇用期間の短さと転職率の高さに表れている。
出稼ぎ労働者のうち、転職した経験のある人は65.9%に達し、25%は7カ月以内に転職した。
一つの職場での出稼ぎ労働者の勤続期間は総じてあまり長いとは言えず、平均2年前後で、前の仕事から次の仕事に就くまでに平均8カ月の間があいている。
(提供/人民網日本語版・翻訳/KM・編集/TF)
』
【トラブルメーカーから友なき怪獣へ】