2013年9月18日水曜日

株式調達で空母建設:中国流「愛国」、話がお金に絡むと、中国人は自己利益優先

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WEDGE Infinity 2013年09月17日(Tue) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3161?page=1

株式調達で空母建設は中国流「愛国」

 中国造船大手、中国船舶重工(CSIC、中国重工と略称)は11日に株式発行の通知を出したが、これが空母建造のための株による資金調達と話題を呼んでいる。

 人民日報系の『環球時報』は13日付社説で「空母の株で庶民の金儲け歓迎」と解説している。 
 これまでは軍の兵器装備は国防費からの財政支出によって資金が調達されるのが普通であったが、株式市場から調達するという新しい方法に注目が集まっているのである。

* * *

【2013年9月13日 環球時報・社説(翻訳)】

 中国船舶重工は11日に22億800万株を発行し(84億8000万元、約1360億円)、大連船舶重工集団(大船集団、と略称)と武昌船舶重工集団(武船集団)の装備業務を買収すると発表した。

 市場では装備設備業務と空母建設が結び付けられて考えられており、国の「海洋強国建設」戦略に対して大いに期待が寄せられている。

 中国重工の措置は「歴史的」であり、「軍需産業の資産株式化」への大きな動きと捉えられ、軍需産業と資本市場の繋がりへの期待も示されている。

 中国の民間では資本が蓄積されてきたにもかかわらず、国の核心的な国防建設とは長期にわたり断絶状態にあった。
 これは軍需産業が閉鎖的な経営方式を温存することを助長してきた。

 中国では中心的な軍需産業に従事する人員は、かつてみな軍服を着ており、それが企業化して市場経済の洗礼を受けるまでになったのだ。
 さらに今後、それが資本市場と繋がるということは中国の軍需産業が変革プロセスにあるということができるだろう。

 空母建造や戦略ミサイル製造のための株購入ということは奇想天外に聞こえるかもしれないが、発展した市場経済においては普通である。世界で著名な軍需産業は高度に開放されていて融資のチャンネルはディズニーやウォルマートといった企業と何ら変わりはない。
 国から受注があればこうした企業の生産能力が続いていくというわけだ。

 庶民のお金は「お金」であると同時に改革の牽引力にもなる。
 長い間、大型国有企業の「官僚主義」を巡って論争があり、これにはもちろん軍需産業も含まれていた。株式市場への参与で軍需産業は資金運用の効率と透明性を基準に運用されることになり、これは企業の管理において一つの「革命的変化」を意味する。

 空母は中国人にとって愛国の象徴で、中国重工の発行する株式を「空母株式」とでも呼びたいところだが、愛国心に訴えるなら庶民にみすみす損をさせるような市場取引となることはないだろう。

 愛国と利益を株式市場に投影させ「すり合わせる」というのも中国社会では全く新しい経験であり、その中から得るものも少なくないはずだ。

 国防は庶民全体に密接にかかわるものだが、株取引の収益となればなおさらである。国防産業も大国の国民経済の最も重要な一部分であり、庶民に主役として直接的に参加させることで国防の内容にも変化をもたらすだろうし、国防と庶民の関係も身近なものになるだろう。

 中国の国防建設では大きなプロジェクトが目白押しだが、この中国重工の措置を筆頭により多くの国防プロジェクトで資本市場が引き入れられ、中国軍需産業で新しい局面が生まれることが望まれる。

 もし現代の国防が単に納税者のお金が使われるだけでなく、同時に庶民の「金儲け」の助けとなるなら、それは強国と富民の一挙両得となり、中国社会において初めての出来事となろう。

* * *

【論評】

 この社説ではあたかも庶民が株式を購入するとそれが空母建造につながり愛国を表明できるかのようなニュアンスでの株式発行が伝えられている。
 しかし本当にそのような単純なものだろうか。

 この社説では詳細が触れられていないが、この報道は上海で行われた中国重工幹部による株式発行についての記者会見(PRフェア)がもとになっている。
 より具体的に言えば「非公開発行A株説明会」である。
 つまりこの資金調達は未公開株の発行によってなされるということである。
 株式の取引は公の市場でなされることはないとはっきり明言しているわけだ。

 そもそも空母建造のような国防に関わる事項は機密情報に属するはずであり、株発行のような透明性が求められる株式市場と相容れるとは思えない。
 現にこの株発行が空母を建設の為と明示された様子はないし、どういった兵器を調達するのかという投資家への説明責任を果たせるのか疑問である。

 社説ではあたかも誰もが売買可能な市場で株式が取引されるようなニュアンスであり、透明性や効率が確保できると解説するが、未公開株なので一般庶民による売買は不可能である。 
よって株の売買によって愛国心を示すことが可能だ、ということにはならない。

 現在、中国初の国産空母が上海で建造中だとされるが、空母単独では使い物にならないため戦闘群として潜水艦や護衛用艦船、艦載機などセットが整って初めて運用可能となる。
 この資金調達が膨大な資金を必要とする空母戦闘群の構築にどれだけ寄与するかは未知数である。
 また投資家にとって今後、かなり長期にわたって成果を期待できない対象への投資が魅力的かどうかも疑わしい。

 にもかかわらず記者会見においては同社の孫波総経理は、投資者は国防発展に参与することができ、長期的な収益を享受できる、と得意顔である。

 また奇妙なのは、株式発行をして大船集団と武船集団の設備や業務を買収すると書かれているが、もともとこの二社は中国重工の子会社であり、系列企業であることからも買収というよりはむしろ増資といったほうがいいのではないかということである。

 ちなみにこの大船集団は、8月28日に習近平国家主席が大連を訪れた際に雨の中を濡れながら岸辺にある同社を視察したばかりであり、彼が空母遼寧を視察したことと合わせても中国自前の空母建造への強い意欲を窺うことができるだろう。
 (ちなみにこの時の自分で傘をさしながらズボンの裾をまくりあげた姿は親近感を抱かせ、ネットには多くの好意的なコメントがあふれた)

 また武船集団といえば、8月31日と9月2日に相次いで1000トン級の海監巡視船を進水させたばかりであり、これで今年に入ってから同社が進水させた巡視船は4隻になった。

 株式発行による市場からの資金調達は国防費に限りがある政府にとって願ったりかなったりの打ち出の小槌に違いない。
 しかし、だからといってそれが社説で述べられるような透明性や効率性が担保された軍需産業なるものが出現することになるとは思えない。

 同社は10月18日に株主総会を予定しており、このA株発行やフュージビリティについての報告書、大船集団や武船集団の資産移転についての評決が行われることになっているという。
 少なくともこのような情報が公開されるだけでも進歩がみられると評価できようが、それが政府、特に国防面での透明性が増していると評価するには時期尚早であろう。

 中国政府は近年、「軍民融合」なる概念を打ち出して国防のための資源や資金、技術を広く社会全体から募ろうと試みている。
 そしてそれは2000年代から導入され始めた国防動員やその一部である国民経済動員という戦争動員へのスキーム構築の大きな流れの中で主張されているのだ。市場経済と軍需産業との結びつきが強まる傾向は、国が庶民に対して動員と称して行う国防の義務強制においてだけでなく、株式市場という利益を介した経済活動でも深められることを示唆している。

 弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)  早稲田大学現代中国研究所招聘研究員
1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。



サーチナニュース  2013/09/14(土) 13:54
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0914&f=national_0914_024.shtml

【中国BBS】空母建設のための資金調達…投資したいと思うか?

  中国の造船大手・中国重工はこのほど、市場で85億元(1360億円)を調達し、その資金を超大型水上艦船などの大型軍需産業プロジェクトに充てることを発表した。
 中国重工はかつて「中国の資本市場において前例のない大規模なプロジェクトを計画している」と発言していたが、これは空母建設のための資金調達であることが分かった。

  中国重工の動きに対し、中国大手検索サイト百度の掲示板に
 「わが国の空母建造に投資したいと思うか?」
というスレッドが立てられ、ネットユーザーらが議論を交わした。

  中国のネットユーザーからは
●.「投資はしたくない」、
●.「寄付はしない」、
●.「税金をすでに払っているのに寄付を募っているのか?」
など、否定的なコメントが比較的多く寄せられた。

  また、
●.「金があったとしても寄付はしないし投資もしない。
 オレ達が困難な状況の時に国は助けてくれるか?」、
●.「もうすでに十分税金を払っている。
 これ以上寄付する必要はない」
など、投資しない具体的な理由を挙げるユーザーも。

  投資をしたいというユーザーもいるにはいたのだが、
●.「オレは5角(約8円)なら寄付する」、
●.「1元(約16円)なら良いかな」
といった極めて低い額の申し出や、
●.「金がないんだよ」
と、投資したくても資金がないユーザーも少なくないようだ。

  ほかには
●.「金融市場の話だろう? 
 株価があがるならば買う人はいるだろうさ」、
●.「もう何日もストップ高が続いている。
 買いたくても買えない。
 どうやら愛国の士は非常に多いようだな」
と、すでに投資している人は少なくないとの意見もあった。

  同掲示板は愛国心のある中国人が多く集まる掲示板であるものの、
 お金に絡んだ話になると、国の軍事のために投資したいと思う人は少ないようで、
 多くの中国人は自分の利益を優先しているようだった。


 しかし、戦艦を作る会社が愛国心を煽って株式を募るなどというのは聞いたことがないが。
 なにか、おかしい。